95. 「発見→原因探索→介入→継続支援」を地域の日常にする

講演会や測定会で低栄養リスクを見つけても、その日だけの助言では、原因も生活も変わらないかもしれません。

低栄養を予防するには、「発見」だけでなく、「原因探索」「介入」「継続支援」までを一つの流れにする必要があります。

この流れを特別なイベントではなく、地域の日常業務へ組み込むことが重要です。その拠点の一つが薬局です。

発見――いつもの接点で変化を捉える

低栄養の発見に、毎回詳しい検査が必要なわけではありません。

「最近、体重が減っていませんか」「食事量は以前と同じですか」という質問から始め、変化がある人にはMNA-SFなどでリスクを調べます。

薬局には同じ人が繰り返し訪れます。前回来局時と比較でき、処方薬や服薬状況も確認できます。介護サービスを利用していない高齢者とも接点があります。

発見する場所は薬局だけではありません。家族、介護、配食などが気づいた変化を、本人の同意を得て、薬局や医療機関へ伝える経路も必要です。

原因探索――「食べてください」で終わらせない

低栄養リスクがあっても、原因が分からなければ適切な介入は選べません。

病気、薬、口腔や嚥下、認知機能、買い物、調理、経済面、孤食など、原因は多岐にわたり、複数重なることもあります。

薬局では、薬の追加や変更と食欲低下の時期、吐き気、口渇、眠気、便秘などを確認できます。複数の処方薬、市販薬、サプリメントも整理します。

薬局だけで原因を確定するわけではありません。病気は医師、口腔は歯科、詳しい食事評価は管理栄養士へつなぎます。薬は自己判断で中止せず、情報を処方医へ伝えます。

介入――原因に合った支援を選ぶ

介入は、栄養補助食品を勧めることだけではありません。

病気なら治療、薬なら処方医との調整、義歯なら歯科治療が必要です。調理が難しい人には配食や介護サービス、経済的な問題には行政の支援を検討します。

食事内容や必要な栄養量については、管理栄養士が本人の病気、食べる力、生活環境に合わせて提案します。

薬局は、すべての介入を自ら行う場所ではありません。どの専門職やサービスが必要かを考え、医療と生活支援を結ぶ中継点として役割を果たします。厚生労働省の健康サポート薬局に関する考え方でも、地域住民からの相談に応じ、必要な専門職や関係機関へつなぐ機能が示されています[1]。

継続支援――次回来局時にもう一度確認する

受診を勧めたり、食事の提案をしたりしても、実行できたとは限りません。

予約や移動が難しい、食品が高い、好みに合わないこともあります。これでは、支援した側だけが「対応済み」と考えてしまいます。

薬局では次回来局時に、受診、薬、食事量、体重を確認できます。改善しなければ介入を見直し、医師や他職種へ情報を返します。

かかりつけ薬剤師・薬局には、服薬情報の一元的・継続的な把握と医療機関等との連携が求められています[2]。この継続性は、低栄養予防にも活用できます。

日常業務に組み込むための工夫

毎回来局した全員へ詳しい栄養評価を行うのは現実的ではありません。

まず短い質問で変化を捉え、該当する人だけ詳しく確認する。結果を記録し、紹介基準、連絡先、次回確認日を決める。紹介用の様式を共通化する。このように業務を段階化すれば、負担を抑えられます。

配食や介護の現場で発見した場合も、同じ項目と連絡方法を使えるようにします。地域全体で「誰が見つけても、適切な場所へつながる」状態をつくることが大切です。

発見、原因探索、介入、継続支援は、別々の事業ではありません。一人の高齢者を中心に循環する一続きの支援です。

薬局を身近な入口と中継点として上手に使い、医療、歯科、栄養、介護、食の事業者がそれぞれの専門性を発揮する。この循環が日常業務の中で回り続けて初めて、地域の低栄養予防は単発の活動から持続する仕組みへ変わります。


執筆者:一般社団法人在宅栄養ケア推進基金

参考文献・参考資料

[1]厚生労働省「薬局・薬剤師に関する情報―患者のための薬局ビジョン」
[2]厚生労働省「かかりつけ薬剤師・薬局に係る評価指標について」
[3]厚生労働省「高齢者保健事業の実施等に関する指針」
[4]日本栄養治療学会「GLIM基準について」

初回公開日
2026年10月20日

最終更新日
2026年10月20日