14.最近外出しなくなった――その背景にあるフレイルと低栄養

「以前は毎日のように買い物や散歩に出ていたのに、最近は家で過ごすことが増えた」「誘っても出かけたがらなくなった」。こうした変化は、本人の性格や気分の問題だけとは限りません。

外出の減少は、体力、気持ち、社会とのつながりが弱くなり始めたサインであると同時に、低栄養を進めるきっかけにもなります。大切なのは、無理に外へ連れ出すことではなく、「なぜ出かけなくなったのか」を一緒に探すことです。

外出の減少はフレイルのサイン

フレイルとは、加齢などにより心身の余力が低下し、健康な状態と要介護状態の間にある状態です。筋力や歩行能力といった身体面だけでなく、気分の落ち込みや認知機能などの精神・心理面、人との交流や社会参加といった社会面も関係します。

厚生労働省の「後期高齢者の質問票」には、「週に1回以上は外出していますか」「ふだんから家族や友人と付き合いがありますか」という項目があります。[1] 外出や交流の変化は、高齢者の健康状態を多面的に把握するための手がかりだからです。

ただし、外出回数が少ないだけでフレイルと決まるわけではありません。もともとの生活習慣、住んでいる地域、季節、天候、移動手段などによっても外出頻度は変わります。注目したいのは、「以前と比べて減ったか」「本人が望む生活を送れなくなっていないか」です。

外出しないと、なぜ低栄養につながるのか

外出が減ると、まず身体を動かす量が少なくなります。活動量が落ちれば筋力が低下しやすく、空腹も感じにくくなります。食事の時間にも空腹を感じず、食べる量が減ることがあります。

買い物に行く回数が減ることも、食生活に影響します。家にあるパン、麺、漬物、菓子などで簡単に済ませる日が増え、肉、魚、卵、大豆製品、乳製品、野菜などを食べる機会が減るかもしれません。食事を抜いていなくても、食品の種類が少なくなれば、エネルギーやたんぱく質などが不足する可能性があります。[3]

また、外出は単なる移動ではありません。人に会う、会話をする、買い物をする、季節を感じるといった刺激があります。それらが減ることで生活に張り合いがなくなり、食事への関心や意欲まで低下する場合があります。

東京都健康長寿医療センターは、フレイルの原因として低栄養、身体活動の低下、社会的孤立、病気を挙げ、栄養、運動、社会参加、病気の治療を組み合わせた対策が大切だとしています。[2]

低栄養から外出できなくなることもある

反対に、低栄養が外出減少の出発点になることもあります。

十分に食べられず、体重や筋肉が減ると、疲れやすくなったり、歩く速度が遅くなったりします。「途中で歩けなくなったら困る」「転んだら怖い」という不安から、外へ出ることを避けるようになる場合があります。

すると、さらに動かなくなり、筋力と食欲が低下します。

「食べられない→動けない→外出しない→食欲や食環境が縮小する→さらに食べられない」

という悪循環です。高齢期の低栄養予防では、食事だけを見るのではなく、外出や交流を含めた日常生活の変化にも目を向ける必要があります。

「出かけなさい」と言う前に理由を聞く

外出しなくなった本人に「家にいると弱るよ」「もっと出かけなさい」と言っても、解決しないことがあります。本人にも説明しにくい理由が隠れているかもしれません。

たとえば、次のような原因が考えられます。

  • 膝や腰の痛み、息切れ、疲れやすさがある
  • 転倒や失禁への不安がある
  • 視力や聴力が低下し、人との会話や移動が負担になった
  • 家族や友人との死別後、気持ちが落ち込んでいる
  • 薬を変更してから眠気やふらつきがある
  • 行きたい場所までの交通手段がない
  • 服装や身だしなみを整えることが難しくなった
  • 認知機能の低下で道に迷うことが不安になった

「どこか痛い?」「外で困ることはある?」「以前好きだった場所にも行きたくない?」など、責めずに具体的に尋ねます。同時に、最近の体重、食事量、冷蔵庫の中身、歩き方、薬の変更なども確認しましょう。

小さな外出と食事を組み合わせる

外出を再開するとき、いきなり長時間の散歩や集まりへの参加を目標にする必要はありません。玄関先に出る、郵便物を取りに行く、家族と近所を少し歩くなど、本人が安心できる範囲から始めます。

その前に、食事が取れているかを確認します。食事量や体重が落ちている人に、運動や外出だけを勧めると負担になることがあります。まず食べられる状態を整え、体力に合わせて動き、人とのつながりを取り戻す。「食べる→動く→つながる」という流れを意識します。

外出が難しい場合も、家族や友人との電話、訪問、配食時の声かけなど、社会との接点を保つ方法はあります。地域の通いの場、地域包括支援センター、薬局、医療機関などに相談し、移動や食事を支える方法を一緒に探すこともできます。

急に外出しなくなり、強い息切れや痛み、急な筋力低下、食欲不振、体重減少、強い気分の落ち込み、物忘れなどを伴う場合は、病気が隠れている可能性があります。「本人が出かけたくないだけ」と決めつけず、かかりつけ医に相談してください。

外出の減少は、生活の小さな変化に見えます。しかし、その背景を丁寧にたどると、低栄養やフレイルを早く見つける入口になります。外へ出ることだけを目標にせず、本人が安心して食べ、動き、人とつながれる環境を整えることが、自分らしい暮らしを守る支援になります。


執筆者
一般社団法人在宅栄養ケア推進基金

参考文献・参考資料

[1] 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」
[2] 東京都健康長寿医療センター「フレイル予防センター」
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高齢者の低栄養予防」

初回公開日
2026年9月4日

最終更新日
2026年9月4日