51.ケアマネージャーだから気づける低栄養

高齢者の低栄養は、一回の食事を見ただけでは分からないことがあります。

デイサービスでは食事を残している。訪問介護では冷蔵庫が空になっている。家族は服が緩くなったと感じている。薬局では、薬が変わってから食欲が落ちたという話が出ている。

それぞれの情報だけでは、「少し体調が悪いのだろう」「もともと少食だから」と見過ごされるかもしれません。

しかし、複数の情報を集めると、一人の高齢者に低栄養が進んでいる可能性が見えてきます。

この断片的な情報をつなげられることが、ケアマネジャーだからこそ発揮できる大きな強みです。

ケアマネジャーは「暮らし全体」を見ている

医師は病気、歯科医師は口腔、薬剤師は薬、管理栄養士は栄養を専門的に評価します。

一方、ケアマネジャーは、本人の病気だけでなく、家族構成、住環境、買い物、調理、外出、経済状況、利用しているサービスなど、暮らし全体を確認します。

低栄養は、病気や食事内容だけで起こるものではありません。

膝が痛くて買い物へ行けない。認知機能が低下して料理の手順が分からない。配偶者を亡くして食事を作る気力がなくなった。食費を節約するため、食事回数を減らしている。

こうした生活上の原因は、診察室や血液検査だけでは見つけにくいものです。

本人の生活を継続して見ているケアマネジャーは、「食べられなくなった原因」が暮らしのどこにあるのかを見つけやすい立場にあります。

毎月の訪問で「以前との違い」に気づける

低栄養の早期発見で重要なのは、現在の状態だけでなく、以前からの変化を見ることです。

ケアマネジャーが定期的に本人と会っていれば、次のような変化に気づくことがあります。

  • 顔や肩回りが痩せた
  • 服やベルトが緩くなった
  • 立ち上がりや歩行が不安定になった
  • 声が小さくなり、会話に元気がない
  • 食品や飲料の在庫が減った
  • 同じものばかり食べている
  • 食事の準備や後片付けが負担になった
  • 外出やデイサービスの利用を休むことが増えた
  • 褥瘡ができた、または傷が治りにくい
  • 入院や病気の後から体力が戻らない

一つだけで低栄養と判断することはできません。しかし、体重減少、食事量の低下、活動量の低下などが重なっていれば、詳しい確認が必要です。

各サービスの小さな気づきを集める

ケアマネジャー自身が食事場面を毎日見られるとは限りません。

そこで重要になるのが、利用しているサービスからの情報です。

訪問介護員は、調理の様子や冷蔵庫の中、食べ残しを確認できます。デイサービスの職員は、昼食の摂取量、むせ、食事姿勢、握力や歩行の変化に気づけます。訪問看護師は、病状、脱水、便秘、口腔状態などを確認できます。

家族、配食事業者、福祉用具専門相談員から、食事や身体の変化が伝えられることもあります。

例えば、

「最近、昼食を半分以上残す」
「お茶を飲むと咳が出る」
「買い物へ行かなくなった」
「ベッドからの立ち上がりが難しくなった」

という情報を個別の出来事で終わらせず、一人の状態変化として組み合わせることが重要です。

介護現場では、食事摂取量、食欲、食事への満足度、口腔に関する問題などを総合的に観察し、問題があれば関連職種と速やかに情報共有する考え方が示されています。[1]

まず体重と食事の変化を確認する

低栄養が疑われる場合、ケアマネジャーがすべてを詳しく評価する必要はありません。

まずは、次のような基本情報を整理します。

  • 現在の体重と、以前の体重
  • 6カ月間で2~3kg以上の体重減少がないか
  • いつから食事量が減ったか
  • 1日何回、何を食べているか
  • 噛みにくさ、むせ、口の痛みがないか
  • 吐き気、便秘、下痢、痛み、発熱などがないか
  • 薬の追加や変更がなかったか
  • 買い物、調理、配膳、片付けのどこで困っているか
  • 本人は今の食生活をどう感じているか

MNA-SFなどの検証された栄養スクリーニングが実施できる環境であれば、その結果も専門職へつなぐ情報になります。

ケアマネジャーの役割は低栄養を診断することではなく、低栄養の可能性に気づき、評価できる専門職へつなぐことです。

原因に合った専門職とサービスをつなぐ

体重が減っているからといって、配食サービスを追加すれば必ず解決するわけではありません。

病気が原因なら医師、歯や入れ歯の問題なら歯科医師や歯科衛生士、薬の影響なら医師や薬剤師、食事内容の調整なら管理栄養士、飲み込みの問題なら医師、看護師、言語聴覚士などへの相談が必要です。

生活上の問題には、次のような支援を組み合わせます。

  • 訪問介護による買い物や調理の支援
  • 配食サービスの利用
  • デイサービスでの食事機会
  • 食事介助や自助具の検討
  • 管理栄養士による居宅での栄養相談
  • 訪問歯科診療や口腔ケア
  • 家族の負担を軽減するサービス

リハビリテーション、栄養、口腔は相互に関係するため、多職種が連携して対象者を把握し、速やかに評価・介入する体制が重要とされています。[2]

ケアマネジャーは、それぞれの専門職の評価や提案を、本人の暮らしの中で実行できるケアプランへつなげる役割を担います。

ケアプランに「食べること」を位置づける

ケアプランでは、入浴、排泄、移動、服薬などが課題として挙がりやすい一方、食事は「一人で食べられている」という理由で問題なしとされることがあります。

しかし、自分で口へ運べることと、必要な量や栄養を取れていることは別です。

低栄養リスクがある場合は、

「体重を維持する」
「主菜を1日2回取れるようにする」
「むせずに安全に食事をする」
「週に何回か人と一緒に食べる」
「買い物や調理の負担を減らす」

など、本人の状況に合った目標を設定します。

そのうえで、体重、食事摂取量、むせ、活動量などを継続して確認し、改善しなければサービスや支援方法を見直します。

管理栄養士が栄養ケア計画の変更を提案し、サービス担当者会議などでケアプランへ反映する連携も制度上示されています。[3]

ケアマネジャーは低栄養支援の「つなぎ役」

ケアマネジャーが栄養の診断や専門的な食事指導を一人で担う必要はありません。

ケアマネジャーだからできることは、暮らしの変化に気づき、各サービスが持つ情報を集め、原因に応じた専門職へつなぎ、その支援を生活の中で続けられる形に整えることです。

低栄養は、食事だけ、病気だけ、介護だけを見ても全体像が分からないことがあります。

複数の情報を「この人の生活」という一つの視点で結びつけられるケアマネジャーは、低栄養の早期発見と継続支援における重要なつなぎ役です。


執筆者
一般社団法人在宅栄養ケア推進基金
参考文献・参考資料

[1] 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)」―食事の観察と多職種による情報共有
[2] 厚生労働省「令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会における主な御意見」
[3] 厚生労働省「令和3年度介護報酬改定に関する通知」―栄養ケア計画と居宅介護支援専門員等との連携
[4] 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」―リハビリテーション・栄養・口腔の一体的取組

初回公開日
2026年9月27日

最終更新日
2026年9月27日