56.JAだからできる高齢者の健康づくり

高齢者の健康づくりでは、運動教室、健康診断、食生活の改善などが、それぞれ別の取り組みとして行われることがあります。

しかし、高齢者の健康は、検査や運動だけで守られるものではありません。

必要な食べ物を買えること。料理を続けられること。人と会い、一緒に食べる機会があること。体調の変化に気づいたとき、相談できる場所があること。

これらが地域の中でつながっている必要があります。

JAは、農産物を扱うだけでなく、支店、直売所、組合員組織、地域活動、健康・福祉事業など、暮らしに関わる多くの接点を持っています。

食と農を基盤に、地域の人、健康づくり、医療・介護をつなげられること。それが、JAだからできる高齢者支援の強みです。

JAはすでに健康づくりへ取り組んでいる

JAグループでは、「運動」「食事」「健診・介護・医療」に「いきがいとゆとり、社会参加」を加えた「JA健康寿命100歳プロジェクト」が展開されています。[1]

介護予防体操、ウォーキング、健康教室、食に関する活動、健診受診の促進など、地域によってさまざまな取り組みが行われています。

この枠組みは、高齢者の低栄養予防とも高い親和性があります。

低栄養は食事だけの問題ではありません。体重減少、筋力低下、外出の減少、孤立、口腔機能の低下、病気などが互いに影響しながら進みます。

そのため、食事、運動、健康確認、社会参加を別々に行うのではなく、一つの健康づくりとして組み合わせることが重要です。

健康な人の中からリスクを早く見つける

病院や介護施設では、すでに病気や生活機能の低下が進んでいる人と接することが多くなります。

一方、JAの活動には、農業や家事を続け、介護サービスを利用していない高齢者も参加します。

本人は元気だと思っていても、

「半年で体重が3kg減った」
「肉や魚を食べる回数が減った」
「硬いものが食べにくくなった」
「以前より歩くのが遅くなった」

といった変化が起きているかもしれません。

健康教室や地域イベントに、体重変化、食事回数、噛みにくさ、むせ、歩行などの簡単な確認を取り入れれば、本人が気づいていなかった低栄養やフレイルのリスクを見つける機会になります。

ただし、JAの職員や地域活動の担い手が低栄養を診断するわけではありません。スクリーニングでリスクが見つかった人を、医療機関、歯科医院、薬局、管理栄養士などへつなぐ仕組みが必要です。

地元の農産物を「食べられる形」で届ける

JAの大きな強みは、地域の農産物と住民を直接つなげられることです。

しかし、新鮮な野菜を渡すだけでは、低栄養予防にならないことがあります。

料理ができない、包丁を扱えない、硬いものを噛めない、一人分だけ作るのが面倒という高齢者にとって、農産物があっても食べられないからです。

そこで、地域の農産物を活用した、

  • 少量の惣菜や弁当
  • 調理の負担が少ない食材セット
  • 肉、魚、卵、大豆製品などを組み合わせた献立
  • 高齢者でも作りやすい料理教室
  • 家族や地域住民と一緒に食べる会
  • 配食や移動販売との連携

などが考えられます。

高齢者の低栄養予防では、主食からエネルギーを取り、肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などからたんぱく質を取ることが重要です。[2]

地元の農産物を売ることから、実際に食べてもらうところまで考えることで、農業振興と高齢者の健康づくりを同時に進められます。

買い物を支えることも健康づくり

農村部では、店舗までの距離が遠く、自動車を運転できなくなると、食品を購入しにくくなることがあります。都市部でも、足腰が弱くなれば、店までの数百メートルが大きな負担になります。

食べ方を指導しても、食品を買えなければ実行できません。

地域の状況に応じて、

  • 直売所や支店を拠点にした移動販売
  • 食品や日用品の宅配
  • 買い物の送迎
  • 電話で注文できる仕組み
  • 配食や生活支援サービスとの連携

などを組み合わせることが考えられます。

JAの助けあい組織では、顔見知りの地域住民によるミニデイサービスや家事援助などが行われている地域もあります。[3]

買い物支援を単なる商品の配送で終わらせず、人と会話し、異変に気づき、必要な支援へつなぐ接点にできることも、地域に根差した組織の強みです。

孤食を減らし、社会参加を増やす

一人で食べることが続くと、食事を簡単に済ませたり、食べる回数が減ったりすることがあります。

JA女性組織、助けあい組織、支店活動、料理教室などを活用し、地域の高齢者が定期的に集まる場をつくれば、食事と社会参加を同時に支えられます。

例えば、地元の農産物を使った昼食会に、体操、健康講話、体重確認、栄養相談を組み合わせる方法があります。

参加者同士が顔見知りになれば、「最近来なくなった」「以前より痩せたようだ」といった変化にも気づきやすくなります。

健康づくりを一度限りのイベントにせず、定期的に集まり、変化を確認できる場にすることが重要です。

JA厚生連や地域の専門職とつなぐ

JAグループには、地域によって、病院・診療所、健診、健康相談、栄養指導、介護サービスなどを担うJA厚生連の事業があります。[4]

こうした保健・医療・福祉の専門性と、地域JAの生活接点をつなげることができれば、

「地域活動で低栄養リスクに気づく」
「専門職が詳しく評価する」
「必要な食事や生活支援につなぐ」
「その後も地域で見守る」

という流れをつくることができます。

JA厚生連の施設がない地域でも、自治体、地域包括支援センター、医師会、歯科医師会、薬剤師会、栄養士会などとの連携は可能です。

重要なのは、JAの中だけですべてを完結させることではありません。JAを地域の入口として、必要な専門職へつなぐことです。

JAの強みは「つなげられること」

高齢者の健康づくりでは、運動だけ、食事だけ、健診だけでは十分でないことがあります。

JAには、農産物を作る人、食品を届ける仕組み、定期的に集まる場所、地域住民の組織、そして地域によっては医療・福祉とのつながりがあります。

これらを別々の事業として終わらせず、

「気づく」
「食べる」
「動く」
「集まる」
「専門職へつなぐ」

という一つの流れにすることが大切です。

食と農を入り口に、高齢者が元気なうちから関わり、低栄養やフレイルの小さなサインを見つけ、必要な支援へつなぐ。

それが、地域に根差したJAだからこそ実現できる高齢者の健康づくりです。


執筆者
一般社団法人在宅栄養ケア推進基金
参考文献・参考資料

[1] JA高齢者福祉ネットワーク「JA健康寿命100歳プロジェクト」
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高齢者の低栄養予防」
[3] JA長野県「健康と福祉―JA助け合い組織とは」
[4] JAグループ「JAファクトブック―厚生事業」
[5] JA全厚連「保健事業(健康増進活動)」

初回公開日
2026年9月30日

最終更新日
2026年9月30日