94.低栄養を早期発見する地域の仕組みとは

低栄養を早く見つけるには、地域で体重測定会を開けばよいのでしょうか。

測定は大切ですが、一度だけ体重を測り、「やせていないから大丈夫」と判断するのは不十分です。低栄養は現在の体重だけでは判断できません。

体重や食事量、筋肉量、病気による炎症など、時間の経過と複数の情報を組み合わせて考えます。

早期発見を機能させるには、「誰に」「どこで」「何を確認し」「どの基準で」「どこへつなぐか」をあらかじめ決めた仕組みが必要です。

待っているだけでは見つからない

低栄養の初期には、強い症状があるとは限りません。食事量の低下や服の緩みを、本人が老化現象だと思うこともあります。

そのため、「気になる人は相談してください」という方法だけでは、支援が必要な人ほど来ない可能性があります。

薬局、配食、訪問介護、デイサービス、通いの場、健診など、既存の接点で確認することが重要です。健康教室へ参加できない人には、訪問や日常サービスを通じて接します。

一度の数値より「変化」を見る

早期発見で特に重要なのが、体重の推移と食事量の変化です。

体格の大きい人は、体重が減ってもBMIでは異常が目立たないことがあります。現在値だけでなく、いつから、どのくらい、意図せず減ったのかを確認します。

定期的に体重や食事量を確認し、前回と比較すれば、小さな変化を捉えやすくなります。むくみや脱水による体重変動にも注意します。

スクリーニングと診断を分ける

地域の現場では、まず短時間で低栄養リスクのある人を抽出します。MNA-SFなどの検証されたスクリーニングツールを使えば、体重や食事量だけでなく、移動能力、最近の病気、認知・心理面なども含めて確認できます。

ただし、スクリーニングで「リスクあり」となっても、それだけで低栄養と診断されたわけではありません。

GLIM基準では、スクリーニング後に、意図しない体重減少、低BMI、筋肉量減少などの現症と、食事摂取量低下、消化吸収の問題、病気による負荷・炎症などの病因を組み合わせて診断します[1]。

地域で広く見つけ、医療・栄養の専門職が詳しく評価するという二段階の流れが必要です。

紹介する基準と連絡先を決めておく

低栄養リスクを見つけてから連絡先を探していては、支援が遅れます。

水分が取れない、意識状態が悪い、強い息苦しさなど、緊急対応が必要な状態を共有します。急激な体重減少や食欲低下が続く場合も、早めに医療機関へつなぎます。

緊急性が低くても原因に応じて相談できるよう、地域の連絡先と紹介手順を準備します。

連絡時には「低栄養かもしれない」だけでなく、体重の推移、食事量、症状、服薬の変更、スクリーニング結果などを共通の様式で伝えます。

見つけにくい人を取り残さない

健診結果や医療・介護データを活用すれば、低BMI、体重減少、受診中断などから支援候補者を抽出できます。一方、健診を受けず、医療や介護ともつながっていない人は、データだけでは見つかりません。

そこで、データから探す方法と、地域の接点で変化に気づく方法を組み合わせます。厚生労働省も、通いの場などを活用して低栄養等の支援対象者を把握し、必要な医療・介護サービスへつなぐことを示しています[2]。

発見数ではなく、その後まで評価する

「何人を測定したか」「何人がリスクありだったか」だけでは、早期発見の仕組みが機能したとはいえません。

本人へ結果を説明できたか、必要な専門職へつながったか、受診できたか、食事量や体重がどう変化したかまで確認します。支援につながらなかった場合は、その理由も記録して運用を見直します。

また、同じ人を定期的に再評価できることも重要です。栄養状態は病気や生活環境によって変化するため、一度「問題なし」でも、その後ずっと安全とは限りません。

低栄養の早期発見は、検査や測定を一度行うことではありません。

地域の複数の場所で変化を捉え、共通の方法で評価し、必要な専門職へつなぎ、その後を確認する。この循環が続いて初めて、低栄養を早く見つけられる地域の仕組みになるのです。


執筆者:一般社団法人在宅栄養ケア推進基金

参考文献・参考資料

[1]日本栄養治療学会「GLIM基準について」
[2]厚生労働省「高齢者保健事業の実施等に関する指針」
[3]厚生労働省「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施について」
[4]日本栄養治療学会「GLIM基準を用いた栄養アセスメントの実施例」

初回公開日
2026年10月20日

最終更新日
2026年10月20日