6.低栄養とフレイルは何が違う?

「低栄養」と「フレイル」は、高齢者の健康について語るときによく一緒に使われます。しかし、低栄養とフレイルは同じものではありません。簡単に整理すると、低栄養は「身体に必要な栄養が不足している状態」、フレイルは「心身の予備力が低下し、健康を崩しやすくなっている状態」です。

両者は別の概念ですが、互いに影響し合う深い関係があります。

低栄養は「栄養状態」の問題

低栄養とは、身体に必要なエネルギーやたんぱく質などが不足し、筋肉や身体機能を保ちにくくなっている状態です。

食事量の減少だけでなく、病気によって栄養の必要量が増えたり、消化・吸収がうまくいかなかったり、炎症によって筋肉が減りやすくなったりすることも関係します。

低栄養を確認するときには、体重やBMIだけでなく、意図しない体重減少、筋肉量、食事量、病気や炎症の有無などを総合的に見ます。つまり、主に「栄養が身体に足りているか」という視点から評価するものです。

フレイルは「弱りやすくなった状態」

フレイルは、加齢などに伴って心身の予備力が低下し、病気、転倒、入院といった出来事をきっかけに、生活機能が大きく低下しやすくなった状態を表します。

一般には、健康な状態と介護が必要な状態の中間と説明されます。しかし、単に「少し身体が弱った」というだけではありません。

フレイルには、主に次の三つの側面があります。[1]

  • 身体的な側面:筋力低下、歩行速度の低下、疲れやすさ、体重減少など
  • 心理・認知的な側面:気分の落ち込み、意欲低下、認知機能の低下など
  • 社会的な側面:外出や人との交流の減少、閉じこもり、経済的な問題など

これらは別々に起こるとは限りません。足腰が弱って外出が減り、人と会わなくなって気持ちが落ち込み、食事も簡単なもので済ませるようになるなど、互いに影響しながら進むことがあります。

低栄養でも、必ずフレイルとは限らない

例えば、病気の影響で食事量が減り、短期間に体重が落ちたものの、歩行や日常生活にはまだ大きな問題がない人がいるとします。この人は低栄養、またはそのリスクが疑われますが、必ずしもフレイルと判定されるとは限りません。

反対に、食事量や体重に目立った問題がなくても、筋力低下、疲れやすさ、認知機能の変化、社会的な孤立などが重なり、フレイルの状態にある人もいます。

見るもの低栄養フレイル
中心となる問題栄養の不足や栄養の利用障害
治療の対象となる
心身の予備力・生活機能の低下
主な確認事項体重、BMI、筋肉量、食事量、病気・炎症など筋力、歩行、疲労、活動、認知・心理、社会参加など
両者の関係フレイルを進める要因になり得る食事や活動の低下から低栄養を招き得る

同じ人が低栄養とフレイルの両方に該当することもありますが、片方だけが見られる場合もあります。

両者をつなぐ「フレイルサイクル」

低栄養とフレイルが深く関係する理由は、悪循環をつくりやすいからです。

食事量が減って低栄養になると、筋肉が減り、筋力や歩く力が低下します。動くことがつらくなると活動量が減り、空腹を感じにくくなります。買い物や料理も難しくなり、さらに食事量が減ります。

食事量の低下→低栄養→筋肉量・筋力の低下→活動量の低下→食欲低下→さらなる低栄養

この循環は「フレイルサイクル」と呼ばれます。厚生労働省も、低栄養をフレイルを招く重要な因子と位置づけています。[2]

ただし、フレイルの原因は低栄養だけではありません。病気、運動不足、口腔機能の低下、認知機能の変化、孤立なども関係します。食事だけを整えれば、すべて解決するわけではないのです。

違いを知ると、必要な支援が見えてくる

低栄養が疑われる場合には、食事量や体重の変化を確認し、なぜ栄養が不足しているのかを探ります。噛みにくさが原因なら歯科的な対応、薬の影響が疑われるなら医師や薬剤師への相談、病気が背景にあるなら治療が必要です。

フレイルが疑われる場合には、栄養に加えて、運動、口腔機能、認知・心理面、社会参加、生活環境なども確認します。

フレイルには、適切な支援によって生活機能の維持や改善が期待できる段階という意味が含まれています。[1][3] だからこそ、早く気づくことが大切です。

「運動だけ」「食事だけ」にしない

フレイル予防というと、体操や筋力トレーニングが注目されがちです。しかし、身体をつくる材料と動くためのエネルギーが不足したまま運動だけを行っても、十分な効果につながらない可能性があります。

一方、栄養をとるだけでほとんど動かなければ、筋力や生活機能を保つことは難しくなります。高齢期には、必要な栄養を確保してから、身体の状態に合った活動につなげる「食べる→動く」の視点が重要です。

食欲や体重だけでなく、歩く速さ、立ち上がり、疲れやすさ、外出や人との交流の変化も一緒に見てください。

低栄養とフレイルは同じではありません。しかし、どちらか一方の小さな変化に気づくことが、もう一方の問題を早く見つけるきっかけになります。言葉の違いを覚えること以上に、その人の「食べる」「動く」「暮らす」が以前と比べてどう変わったかを見ることが大切です。


執筆者
一般社団法人在宅栄養ケア推進基金

参考文献・参考資料

  1. 一般社団法人日本サルコペニア・フレイル学会「フレイルとは」
  2. 厚生労働省「高齢者の低栄養予防」
  3. 公益財団法人長寿科学振興財団「フレイルとは」
  4. Cederholm T, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition: A consensus report from the global clinical nutrition community. Clinical Nutrition. 2019.
  5. Volkert D, et al. ESPEN practical guideline: Clinical nutrition and hydration in geriatrics. Clinical Nutrition. 2022.

初回公開日
2026年8月27日

最終更新日
2026年8月27日