9.最近、体重が減っていませんか?高齢者の体重減少に注意

「最近、少し痩せたみたい」「ベルトの穴が一つ縮まった」。高齢者のこうした変化を、本人も家族も「健康的になった」「年齢のせい」と受け止めることがあります。

しかし、食事制限や運動をしていないのに体重が減る「意図しない体重減少」は、低栄養の早期サインであると同時に、病気や生活上の問題を知らせるサインかもしれません。

大切なのは、現在の体重だけでなく、「いつから、どのくらい、なぜ減ったのか」を確認することです。

痩せていなくても体重減少は重要

体重が標準範囲にある人や、以前は太っていた人でも注意が必要です。

例えば、体重60kgの人が半年で57kgになれば、3kgの減少です。数字だけを見ると大きく感じないかもしれませんが、元の体重から5%減ったことになります。体重80kgの人が76kgになった場合も同じ5%です。見た目にはまだ体格がよくても、身体の中では筋肉が減っている可能性があります。

国際的な低栄養診断の考え方であるGLIM基準では、本人が意図していない「過去6か月以内の5%を超える体重減少」が、低栄養を評価する重要な項目の一つとされています。[1]

ただし、5%未満なら安心という意味ではありません。短期間に急に減った場合や、現在も減り続けている場合、ほかの症状を伴う場合は、減少率が小さくても確認が必要です。

なぜ体重が減ると注意が必要なのか

高齢者の体重減少では、脂肪だけでなく筋肉も一緒に減りやすいことが問題です。

筋肉が減ると、立ち上がる、歩く、階段を上るといった動作が難しくなります。活動量が落ちれば空腹を感じにくくなり、買い物や料理も負担になります。その結果、さらに食事量が減り、体重と筋肉が減る悪循環に入りやすくなります。

体重減少→筋肉量・筋力の低下→活動量の低下→食欲低下→さらなる体重減少

意図しない体重減少は、生活機能の低下や病気からの回復の遅れなどとも関連するため、高齢者では見過ごさないことが大切です。[2]

「食べる量が減った」だけとは限らない

体重が減る理由として、まず考えられるのは食事量の低下です。食欲がない、噛みにくい、飲み込みにくい、食後すぐ満腹になる、買い物や調理が難しいなど、さまざまな事情があります。

一方、食べているつもりでも体重が減る場合があります。病気や炎症によって身体が多くのエネルギーを使っていたり、消化や吸収がうまくいかなかったりする可能性があるからです。

体重減少の背景には、消化器の病気、感染症、甲状腺などの内分泌疾患、心臓や肺の病気、がん、認知機能の低下、抑うつ、薬の影響などが隠れていることもあります。ただし、体重減少だけで特定の病気を判断することはできません。

「低栄養だから食べさせればよい」と決めつけず、原因を確認することが重要です。米国国立老化研究所も、急で意図しない体重減少は重大な病気のサインである可能性があり、医療専門職への相談を勧めています。[3]

体重だけに表れないこともある

家庭用体重計では、測る時間、服装、食事、排便、水分量などによって数値が変わります。一日の小さな増減だけで一喜一憂する必要はありません。できるだけ同じ条件で測り、数週間から数か月の流れを見ることが大切です。

また、むくみがあると、体内の水分によって体重が増え、脂肪や筋肉の減少が隠れることがあります。反対に、脱水や利尿薬の影響で水分が減り、短期間に体重が落ちることもあります。

体重だけでなく、服や指輪がゆるくなった、腕や脚が細くなった、食事量が減った、歩くのが遅くなったといった変化も一緒に確認しましょう。

「痩せてよかった」で終わらせない

生活習慣病のために、医師や管理栄養士と相談しながら計画的に減量している場合は、意図しない体重減少とは異なります。ただし、高齢期の減量では、脂肪だけでなく筋肉まで失わないようにする視点が必要です。

自己流で主食や肉を極端に減らしている場合や、食欲低下を「ダイエットになってちょうどよい」と受け止めている場合は注意してください。高齢期には、体重の数字を下げることだけでなく、必要な栄養と筋肉を保つことが重要です。

医療機関に相談したい変化

次のような場合は、かかりつけ医などへの相談を検討してください。

  • 食事制限をしていないのに体重が減り続けている
  • 半年ほどで元の体重の5%前後以上減った
  • 食欲低下や食事量の減少が続いている
  • 発熱、痛み、息苦しさ、吐き気、下痢などを伴う
  • 食べ物が飲み込みにくい、むせる
  • 強いだるさ、気分の落ち込み、むくみがある
  • 退院後も体重や体力が戻らない

急激な体重減少や強い症状がある場合は、早めの受診が必要です。薬を飲み始めたあとに食欲や体重が変化した場合は、自己判断で中止せず、医師や薬剤師に相談しましょう。

体重減少は「身体からのメッセージ」

体重を測る目的は、数字に振り回されることではありません。体重の変化を、食事、筋肉、病気、暮らしの変化に気づくための手がかりとして使うことです。

「何kgなら安全か」だけでなく、以前の自分と比べてどう変わったかを見てください。意図しない体重減少に早く気づき、原因を確かめることが、低栄養の悪循環を防ぐ第一歩になります。


執筆者
一般社団法人在宅栄養ケア推進基金

参考文献・参考資料

  1. Cederholm T, et al. The GLIM consensus approach to diagnosis of malnutrition: A 5-year update. Clinical Nutrition. 2025.
  2. Gaddey HL, Holder KK. Unintentional Weight Loss in Older Adults. American Family Physician. 2021.
  3. National Institute on Aging “Maintaining a Healthy Weight”
  4. 厚生労働省「おいしく食べて低栄養予防!」
  5. Cederholm T, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition: A consensus report from the global clinical nutrition community. Clinical Nutrition. 2019.

初回公開日
2026年8月31日

最終更新日
2026年8月31日