20.フレイルチェックと低栄養チェックは何が違う?

『高齢者の低栄養を知る100の話⑳』

フレイルチェックと低栄養チェックは、どちらも高齢期の変化を早めに見つけるためのものです。ただし、見ている範囲と目的は同じではありません。

ひと言でいえば、フレイルチェックは「心身や社会生活の弱りを広く見るもの」、低栄養チェックは「必要な栄養が足りなくなる危険を詳しく見るもの」です。どちらか一方を選ぶのではなく、組み合わせて使うことで、見逃しを減らせます。

フレイルチェックは「暮らし全体の弱り」を見る

フレイルとは、年齢を重ねるなかで心身の予備力が低下し、健康な状態と要介護状態の間にある段階を指します。適切な支援によって改善する可能性があるため、早めに気づくことが大切です。

フレイルの確認方法には、歩く速さ、握力、活動量、疲労感、体重減少などを見る方法があります。また、地域で使われる質問票やチェックでは、身体面だけでなく、物忘れや気分、口の機能、食生活、外出、人とのつながりまで確認する場合があります[1]。

つまり、フレイルチェックの役割は、生活のどの部分に弱りが生じているのかを広く探すことです。

ただし、「フレイルチェック」という名称の検査が一つだけあるわけではありません。使う質問票や判定基準によって項目が異なるため、点数だけを比べるのではなく、何を調べた結果なのかを確認する必要があります。

低栄養チェックは「栄養不足の危険」を見る

低栄養チェックは、食事量の減少や意図しない体重減少などから、栄養状態が悪化している可能性を見つけるものです。

代表的な方法の一つがMNA-SFです。食事量、体重減少、移動能力、急性疾患や精神的ストレス、認知・精神面、BMIなどを確認し、高齢者の低栄養リスクを評価します[2]。

ここで大切なのは、チェックの結果だけで低栄養と診断されるわけではないことです。MNA-SFなどは、詳しい評価が必要な人を見つけるための「スクリーニング」です。

リスクがある場合には、体重や筋肉量、食事量、病気や炎症の有無などを調べ、必要に応じて医師や管理栄養士などがGLIM基準を用いた診断や評価につなげます[3]。

二つの違いを整理すると

比較する点フレイルチェック低栄養チェック
主な目的心身・社会生活の弱りを広く見つける低栄養のリスクを見つける
主な確認項目身体機能、活動、認知・気分、口腔、社会参加など食事量、体重減少、BMI、移動能力、病気など
分かることどの領域に弱りがあるか栄養面の詳しい評価が必要か
次の対応運動、栄養、口腔、社会参加、治療などを検討原因を探し、栄養評価・医療・食支援につなぐ

両者には重なる項目があります。たとえば体重減少、活動量の低下、歩行の変化は、フレイルにも低栄養にも関係します。しかし、重なっているからといって同じものではありません。

たとえば、食事量と体重は保たれていても、外出が減り、人との交流が途絶えている人は、社会的フレイルへの支援が必要かもしれません。

一方、まだ歩けていて外出もしている人でも、食事量が減り、半年ほどで体重が落ちていれば、低栄養リスクを詳しく確認する必要があります。体格が大きい人でも、意図しない体重減少や筋肉の減少があれば安心とは限りません。

「チェックして終わり」にしない

実際の支援では、まずフレイルチェックで弱りを広く捉え、食事や体重に気になる点があれば、MNA-SFなどで栄養面を掘り下げる流れが考えられます。

反対に、低栄養リスクが見つかった人について、噛む力、薬、病気、買い物、孤食、認知機能、経済状況などを確認すると、フレイルチェックで扱う領域の課題が見えてくることもあります。

記録も重要です。体重、食事量、チェック日、点数、その後の対応を残し、一定期間後にもう一度確認すると、変化と支援の効果を追いやすくなります。家族、薬局、介護事業所、医療機関などが必要な情報を共有できれば、小さな変化を継続的な支援につなげやすくなります。

なお、急な体重減少、ほとんど食べられない状態、むせや飲み込みにくさ、発熱や息苦しさ、急に歩けなくなったといった変化がある場合は、チェックの点数にかかわらず医療機関へ相談してください。

低栄養が疑われるときに、運動だけを増やすのは適切とは限りません。まず食べられる状態を整え、必要な栄養を確保し、そのうえで無理のない活動につなげる。「食べる→動く」という順序を意識することが、筋肉と暮らしを守る基本です。

フレイルチェックで広く見つけ、低栄養チェックで「食べる」の問題を深く見る。そして原因を探し、必要な支援につなぐ。この二段構えが、高齢者の変化を早期に捉える力になります。


執筆者
一般社団法人在宅栄養ケア推進基金

参考文献・参考資料

[1]厚生労働省「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施について
[2]Nestlé Nutrition Institute「Mini Nutritional Assessment 簡易栄養状態評価表(MNA-SF)日本語版
[3]日本栄養治療学会「GLIM基準について」日本栄養治療学会「GLIM基準について


初回公開日
2026年9月10日

最終更新日
2026年9月10日