21.家族でも気付ける「低栄養のサイン」10項目

低栄養は、ある日突然始まるとは限りません。「食べる量が少し減った」「服がゆるくなった」「歩くのが遅くなった」といった小さな変化が、少しずつ重なって進むことがあります。毎日一緒に暮らしていない家族でも、帰省や電話、外食などの機会に気づけるサインがあります。

ただし、次の項目に当てはまれば、直ちに低栄養と決まるわけではありません。病気、薬、口の問題、気分の落ち込み、生活環境などでも同じ変化は起こります。大切なのは、「歳を取ったから仕方がない」と片づけず、以前との違いを見ることです。

家族が確認したい10項目

1.意図せず体重が減っている

最も確認しやすいサインは体重の変化です。本人が痩せようとしていないのに体重が減っている場合は注意します。厚生労働省の「後期高齢者の質問票」でも、「6か月間で2~3kg以上の体重減少」が確認項目になっています[1]。

体重を聞くだけでなく、できれば同じ体重計、似た服装、同じ時間帯で定期的に測りましょう。一度の数字より、いつからどのくらい減ったかが重要です。

2.服やベルトがゆるくなった

体重を測っていなくても、ズボンの腰回り、ベルトの穴、腕時計、指輪などの変化から痩せたことに気づけます。頬や肩、太もも、ふくらはぎが細くなっていないかも見てください。

「もともと太っているから少し痩せても大丈夫」とは限りません。体格が大きい人でも、短期間に体重や筋肉が減れば低栄養の可能性があります。

3.食事を残すことが増えた

以前は食べ切っていた量を残す、主食だけでおかずに手をつけない、夕食を抜くといった変化はありませんか。「3食出している」ことと「本人が必要量を食べている」ことは同じではありません。

数日だけで判断せず、どの料理を、どの程度、いつから残しているのかを確認します。食事量の減少は、低栄養を見つけるうえで重要な情報です[2]。

4.食事の内容が単調になった

ごはんと漬物だけ、パンとコーヒーだけ、麺類だけという食事が続くと、食べているつもりでも、エネルギーやたんぱく質などが不足することがあります。冷蔵庫に食品がほとんどない、同じ食品ばかり残っている、賞味期限切れが増えたといった変化も手がかりです。

一人暮らしでは、買い物や調理が負担になり、食事が簡単なものへ偏ることがあります。

5.肉、魚、卵、乳製品などを避けるようになった

「肉は重い」「卵は控えたほうがよい」「太りたくない」などの理由で、たんぱく質を含む食品を避けていないでしょうか。持病によって食事上の指示がある場合を除き、自己判断で多くの食品を制限すると、必要な栄養まで不足することがあります。

家族が良かれと思って制限している場合もあります。治療食が必要な人は、制限を続けるべきか、医師や管理栄養士に確認してください。

6.噛みにくい、むせる、口が乾く

硬いものを避ける、食べるのに時間がかかる、義歯を外している、お茶や汁物でむせるといった変化は、食事量の低下につながります。歯の欠損、合わない義歯、口の乾燥、飲み込む機能の低下などは、高齢者が低栄養になる要因です[3]。

食後に声がガラガラする、咳が増える、発熱を繰り返す場合は、早めに医療機関や歯科へ相談しましょう。

7.食欲がない、味がしないと訴える

食欲低下の背景には、便秘、痛み、吐き気、口内炎、味覚の変化、薬の影響、感染症、持病の悪化、気分の落ち込みなどが隠れていることがあります。「高齢だから食が細い」で終わらせず、いつから、何をきっかけに食べられなくなったかを尋ねます。

新しい薬を飲み始めた時期や、病気にかかった時期と重なっていないかも重要です。薬は自己判断で中止せず、医師や薬剤師へ相談してください。

8.疲れやすく、横になる時間が増えた

以前より元気がない、昼間も横になっている、外出の準備を嫌がるという変化にも注意します。低栄養では筋肉量や筋力が低下し、疲れやすさや活動量低下につながることがあります[4]。

一方で、心臓や肺の病気、貧血、感染症などでも同じ症状は起こります。急な変化や息切れ、胸痛、発熱などがあれば、栄養だけの問題と考えないことが大切です。

9.歩くのが遅くなり、立ち上がりにくそう

歩幅が小さくなった、手すりにつかまるようになった、椅子から立つのに手を使う、転ぶことが増えた。このような変化は、筋力低下のサインかもしれません。

食べる量が減ると筋肉が減り、動きにくくなります。動かないと食欲や食事量がさらに減りやすくなり、「食べない→動けない→さらに食べられない」という悪循環に入ることがあります。

10.買い物、調理、会食をしなくなった

低栄養のきっかけは、身体の問題だけではありません。スーパーまで行けない、重い物を運べない、台所に立つのがつらい、配偶者を亡くして一人で食べるようになった――こうした生活の変化も食事量を減らします[3]。

電話で「ちゃんと食べている」と答えていても、具体的に「昨日の夕食は何を食べた?」「冷蔵庫には何がある?」と聞くと、実際の状況が分かることがあります。

何項目なら低栄養なのか

この10項目は、家族が変化に気づくための目安であり、該当数だけで低栄養を診断するものではありません。一つでも急激な変化があれば対応が必要なことがあります。

反対に、目立つ変化が少なくても、体重減少や食事量低下が続いていれば、MNA-SFなどの検証された方法で低栄養リスクを確認することが大切です[5]。

低栄養の診断では、意図しない体重減少、低BMI、筋肉量減少に加え、食事摂取量の減少、消化吸収の問題、病気や炎症などが検討されます[2]。見た目や血液検査の一項目だけでは判断できません。

気づいたら、記録して相談する

気になる変化があれば、「最近痩せたみたい」だけで終わらせず、現在の体重、以前の体重、食事量、症状、始まった時期、服薬の変化を記録します。その情報を、かかりつけ医、管理栄養士、薬剤師、歯科医師、ケアマネジャーなどへ伝えると、原因を探りやすくなります。

ほとんど食べられない、水分も取れない、短期間で急に痩せた、繰り返しむせる、意識がぼんやりする、急に歩けなくなった、発熱や息苦しさがある場合は、チェックを続けるより早めに医療機関へ相談してください。

家族の役割は、無理に「もっと食べて」と迫ることではありません。変化に気づき、食べられない原因を一緒に探し、必要な支援へつなぐことです。

食べられる状態を整えてから、無理のない活動へつなげる。「食べる→動く」を守ることが、低栄養から始まる悪循環を防ぐ第一歩になります。


執筆者
一般社団法人在宅栄養ケア推進基金

参考文献・参考資料

[1]厚生労働省「後期高齢者の質問票の解説と留意事項
[2]日本栄養治療学会「GLIM基準について
[3]厚生労働省 e-ヘルスネット「高齢者の低栄養予防
[4]公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「高齢者の低栄養
[5]Mini Nutritional Assessment「簡易栄養状態評価表(MNA-SF)日本語版

初回公開日
2026年9月10日

最終更新日
2026年9月10日