26.食事量の少ない高齢者の「ちょい足し」栄養術

食事量が少ない高齢者に、単純に料理を大盛りにしても、食べられる量が増えるとは限りません。むしろ、目の前の量に圧倒され、食欲を失ってしまうことがあります。

そのようなときに役立つのが「ちょい足し」です。普段食べている料理に少量の食品を加え、食事のかさを大きく増やさず、エネルギーやたんぱく質を補います。

第25回で紹介した間食が「食べる回数を増やす方法」なら、ちょい足しは「一口当たりの栄養を高める方法」です。

まず、何が不足しているかを見る

ちょい足しは、何でも加えればよいわけではありません。ごはんやパンをほとんど食べていないならエネルギー不足、肉、魚、卵、大豆製品が少ないならたんぱく質不足が考えられます。

一日の食事を振り返り、「主食が少ないのか」「主菜がないのか」「食事全体が半分ほどしか入らないのか」を確認します。高齢期は食事量が少なくなり、あっさりしたものを好むことで、エネルギーやたんぱく質が不足する場合があります[1]。

体重が減っている人では、体重と食事量を記録し、ちょい足しを始めた後に変化があるかを見ることも大切です。

たんぱく質をちょい足しする

おかずが少ない人には、卵、乳製品、大豆製品、魚などを少量加えます。

  • みそ汁やスープに、卵や豆腐を加える
  • ごはんに、しらす、卵、納豆などを添える
  • うどんに、卵、油揚げ、ツナなどを加える
  • トーストに、チーズや卵を組み合わせる
  • ヨーグルトに、きな粉を加える
  • ポタージュやシチューに、牛乳や乳製品を使う

これなら、食事を一品増やすよりも負担が少なく、調理や後片付けも増えにくくなります。肉だけにこだわらず、魚、卵、大豆・大豆製品、乳製品などを組み合わせることがポイントです[2]。

しらす、チーズ、魚の缶詰、加工肉などは便利ですが、商品によって塩分が多いことがあります。毎回同じ食品に偏らず、量や頻度を調整しましょう。

エネルギーをちょい足しする

食事全体の量が少ない人では、たんぱく質だけでなくエネルギーの確保も必要です。油やマヨネーズ、バターなどは、少量でもエネルギーを加えやすい食品です。

たとえば、温野菜に少量の油やマヨネーズを使う、炒め物やスープに油を加える、パンにバターなどを塗る方法があります。乳製品や卵、大豆製品は、エネルギーとたんぱく質の両方を補う助けになります。

ただし、脂っこいものを加えすぎると、胃もたれや下痢が起こり、かえって食べられなくなることがあります。少量から試し、本人が食べやすいか、次の食事に影響しないかを確認します。

「健康のためには油を使わないほうがよい」と考えて、すべてをゆで物やあっさりした料理にしている家庭もあります。脂質の取りすぎには注意が必要ですが、食事量が少なく体重が減っている高齢者と、減量が必要な人では、食事の考え方が同じとは限りません。

料理別に考えると続けやすい

毎回栄養計算をする必要はありません。よく食べる料理ごとに、「これには何を足せるか」を決めておくと続けやすくなります。

おかゆだけなら卵やほぐした魚、豆腐などを加える。麺だけなら卵や肉、油揚げをのせる。パンとコーヒーだけなら、牛乳、ヨーグルト、チーズなどを一緒に取る。市販の弁当でおかずが少なければ、冷ややっこや卵料理を加える。このように、いつもの食事の不足部分を埋めます。

一方で、野菜ばかりを加えて料理のかさを増やすと、満腹になり、主食や主菜を残すことがあります。野菜は大切ですが、食事量が少ない人では、エネルギーとたんぱく質を先に確保できているかも確認しましょう。

食べやすさと安全を優先する

栄養価を高めても、噛めない、飲み込めない料理では意味がありません。硬い食品は軟らかく煮る、肉は薄切りやひき肉にする、ぱさつく料理にはあんやソースを添えるなど、口の状態に合わせます。

ただし、刻んだ食品、粉末、きな粉、すりごまなどは、飲み込む機能によっては口の中に散らばり、むせることがあります。水分でむせる、食後に声が変わる、口の中に食べ物が残る場合は、自己流で形を変え続けず、医師、歯科医師、言語聴覚士、管理栄養士などに相談してください。栄養管理と口腔・嚥下機能の評価を組み合わせることが重要です[3]。

持病や食事制限がある場合

糖尿病、腎臓病、心不全、脂質異常症などがある人では、加える食品や量を個別に調整する必要があります。腎臓病ではたんぱく質やカリウム、心不全では塩分や水分などへの配慮が必要な場合があります。

治療食を続けている人は、自己判断で食品を増やさず、主治医や管理栄養士に確認してください。一方、以前の指導を厳しく守るうちに体重や筋肉が減っている場合も、現在の病状と栄養状態に合った制限か、見直してもらうことが大切です。

急に食事量が減った、意図せず体重が落ちた、吐き気や腹痛がある、むせが増えた、発熱や強いだるさがある場合は、ちょい足しだけで対応せず、医療機関へ相談してください。

ちょい足しの目的は、たくさん食べさせることではありません。本人が食べられる量の中で、必要な栄養を少しずつ増やすことです。

小さな工夫を続けて食べる力を支え、そのエネルギーを無理のない活動につなげていきましょう。


執筆者
一般社団法人在宅栄養ケア推進基金

参考文献・参考資料

[1]厚生労働省「栄養・食生活
[2]厚生労働省 e-ヘルスネット「高齢者の低栄養予防
[3]厚生労働省「リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の一体的取組について


初回公開日
2026年9月15日

最終更新日
2026年9月15日