『高齢者の低栄養を知る100の話㉗』
「高齢者もプロテインを飲んだほうがよいですか」。低栄養や筋力低下が心配になると、よく出る質問です。
結論からいえば、プロテインはすべての高齢者に必要なものではありません。しかし、食事だけでは必要なたんぱく質を取りにくい人にとっては、補う手段の一つになります。
年齢を重ねると、以前より食事量が減る、肉や魚が食べにくい、朝食が簡単になりやすいといった変化が起こります。特に高齢者では、食事全体の量が減ることにより、たんぱく質も不足しやすくなります。
大切なのは、年齢だけで必要性を決めず、食事量、体重の変化、筋肉や活動の状態、病気を確認して判断することです。
そもそも「プロテイン」とは何か
一般にプロテインと呼ばれる商品は、牛乳由来のホエイやカゼイン、大豆由来のソイなど、たんぱく質を補うことを主な目的とした食品です。医薬品ではなく、飲めば筋肉が増えると保証されたものでもありません。
ホエイプロテインは牛乳由来で、消化・吸収が比較的速く、筋肉づくりに関わる必須アミノ酸を多く含むことが特徴です。一方、ソイプロテインは大豆由来で、植物性のたんぱく質を補いたい人や、牛乳由来の商品が合わない人にも選択肢になります。ソイプロテインも、筋肉など身体の材料となるたんぱく質を補うことができます。
どちらが一律に優れているというより、食事全体との組み合わせ、アレルギーの有無、味や飲みやすさなどを踏まえ、続けやすいものを選ぶことが大切です。
一方、少量でエネルギー、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどをまとめて補う栄養補助飲料や栄養調整食品もあります。見た目は似ていますが、たんぱく質中心の商品と、エネルギーを含めて幅広く補う商品では役割が異なります。
食事量が少なく体重も減っている人に、エネルギーがあまり含まれないプロテインだけを加えても、低栄養への対応として十分とは限りません。何を補いたいのかを先に考える必要があります。
プロテインが役立つ可能性がある人
たとえば、次のような人では利用を検討できます。
- 食事量が少なく、肉、魚、卵、大豆製品などを十分に食べられない
- 噛む力が低下し、固形の主菜を食べにくい
- 少量しか食べられず、ちょい足しをしても不足が続く
- 病気や手術後などで食事量が落ち、専門職から栄養補給を勧められた
- 運動に取り組んでいるが、食事からのたんぱく質が不足している
世界保健機関(WHO)は、低栄養状態にある高齢者に対して、栄養に関する助言とともに、必要に応じて経口的な栄養補助を行うことを推奨しています[1]。
ただし、これは高齢者全員に一律で商品を勧めるという意味ではありません。必要性を評価し、その人に合った栄養を補うという考え方です。
一方、3食から必要なエネルギーとたんぱく質を取れ、体重、筋力、活動量が保たれている人では、必ずしもプロテインを追加する必要はありません。普段の食事には、たんぱく質以外の栄養素や食べる楽しみもあります。まず食事を基本にすることが大切です。
ソイプロテインは、日々の筋肉を守るための選択肢にもなる
プロテインというと、筋肉を大きくするために本格的な運動をする人のもの、というイメージがあるかもしれません。しかし高齢者では、鍛えること自体よりも、歩く、買い物に行く、家事をするといった日常生活を続けるために、今ある筋肉をできるだけ維持することが重要になります。
ソイプロテインも、筋肉を含む身体の材料となるたんぱく質を補う食品です。肉や魚を毎回十分に食べることが難しいときや、朝食・間食でたんぱく質が不足しやすいときに食事に加えることで、一日のたんぱく質を確保しやすくなります。
ソイプロテインを飲むだけで筋肉が維持できるわけではありませんが、食事から不足しやすいたんぱく質を補い、日々の活動を支えるための選択肢にはなります。特に、激しい運動をするためというより、これからも自分らしく動き、暮らし続けるために栄養を整えたい人にとって、取り入れやすい方法の一つです[5]。
「たんぱく質の量」だけを見ない
商品を選ぶとき、たんぱく質の多さだけを比較しがちです。しかし、低栄養予防では、次の点も確認します。
- 1回分のエネルギーとたんぱく質
- 糖質、脂質、塩分の量
- ビタミンやミネラルを含むか
- 牛乳や大豆などのアレルギー原料
- 一度に飲める量、味、甘さ
- 粉末を何に溶かすのか
食事全体が少ない人には、たんぱく質だけでなくエネルギーが必要です。エネルギーが不足すると、取ったたんぱく質が筋肉などの材料ではなく、エネルギー源として使われやすくなります。
反対に、食事量は十分で、たんぱく質だけが不足しているなら、たんぱく質を中心に補う考え方があります。商品名や宣伝文句ではなく、栄養成分表示を見て、目的に合っているかを確認します。
食事を減らさない使い方が大切
プロテインや栄養補助飲料でお腹がいっぱいになり、次の食事を残してしまえば、一日の摂取量が増えないことがあります。原則として食事の代わりではなく、食事で不足する分を補うものとして使います。
食事の直前を避けて間食として取る、1回分を少量に分ける、朝食などたんぱく質が少ない食事に加えるといった方法があります。何時にどのくらい取り、その後の食事量がどう変わったかを記録すると、本人に合う使い方を見つけやすくなります。
厚生労働省は、高齢者の筋肉量を維持するため、1日1食や2食に偏らず、3食それぞれでたんぱく質を含む食品を取ることを勧めています[2]。夕食にまとめて取るより、まず朝食や昼食で不足していないかを見直します。
飲めば筋肉がつくわけではない
たんぱく質は筋肉の材料ですが、材料を取るだけで筋肉が増えるとは限りません。筋肉を維持するには、歩く、立ち座りを繰り返す、無理のない筋力運動を行うなど、筋肉への刺激も必要です。
一方で、運動に取り組んでいても、たんぱく質やエネルギーが十分でなければ、筋肉の維持・回復に必要な材料が不足します。栄養不足のまま運動量だけを増やすと、疲労や体重減少につながる可能性があります。
まず食事と栄養を確保し、そのうえで身体の状態に合った活動を行う。「食べる→動く」が基本です[3]。
フレイルは、早い段階で食事、運動、社会参加などを見直すことで、健康な状態に戻れる可能性があります。だからこそ、70代以降になってから慌てるのではなく、50代頃から体重が意図せず減っていないか、毎食にたんぱく質が入っているか、身体を動かす習慣があるかを意識しておくことが大切です。
病気やけがの直後、転倒リスクが高い人、心臓や肺に病気がある人は、運動を始める前に医師やリハビリテーション専門職へ相談してください。
自己判断で始めないほうがよい場合
特に注意したいのが腎機能の低下です。腎臓病では、病気の段階や治療方法によって、たんぱく質、カリウム、リン、水分などの調整が必要になることがあります[4]。糖尿病がある人では糖質、心不全などで水分制限がある人では飲む量にも配慮が必要です。
持病があり、医師や管理栄養士から食事指導を受けている人は、自己判断でプロテインを加えず相談してください。薬を複数飲んでいる人も、商品を医師や薬剤師に見せて確認すると安心です。
また、液体でむせる人に、薄い飲料をそのまま勧めるのは危険な場合があります。飲み込みにくさ、食後の声の変化、繰り返す咳や発熱があれば、食形態を含めて専門職の評価を受ける必要があります。
使った後の変化まで確認する
プロテインを始めることが目的になってはいけません。体重、食事量、歩く速さ、疲れやすさなどを記録し、一定期間後に変化を確認します。体重が減り続ける、食欲が戻らない、下痢や便秘が起きた場合は、量や種類、そもそもの原因を見直します。
急な体重減少、ほとんど食べられない状態、吐き気、腹痛、発熱、息苦しさ、強いだるさがある場合は、プロテインで補う前に医療機関へ相談してください。背景に治療が必要な病気が隠れている可能性があります。
プロテインは、食事に代わる万能なものでも、若い人だけのものでもありません。必要な人が、不足する栄養を補うために適切に使えば役立つ可能性があります。
まず身体と食事の状態を確認し、「何が、どのくらい足りないのか」を考えること。そのうえで、食事だけではたんぱく質を補いにくいときには、ソイプロテインなども上手に活用すること。それが、高齢者のプロテイン選びで最も大切です。
参考文献・参考資料
[1] World Health Organization. Integrated care for older people: guidelines on community-level interventions to manage declines in intrinsic capacity. 2017.
[2] 厚生労働省.e-ヘルスネット「たんぱく質」および高齢者の健康づくりに関する資料.
[3] 厚生労働省.健康日本21(第三次)アクション支援システム.フレイル予防に関する資料.
[4] 日本腎臓学会.CKD診療ガイドライン.
[5] Volkert D, et al. ESPEN practical guideline: Clinical nutrition and hydration in geriatrics. Clinical Nutrition. 2022;41(4):958-989.
初回公開日
2026年9月15日
最終更新日
2026年9月15日
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