『高齢者の低栄養を知る100の話㉘』
栄養補助食品は、食事だけでは必要な栄養を取り切れないときに、不足分を補うための食品です。上手に使えば低栄養の予防や改善を支えることができますが、「高齢になったら飲むもの」「食欲がないときは食事の代わりにすればよい」というものではありません。
使い始める前に、何が不足しているかを確認します。体重が減っているのか、食事量が少ないのか、たんぱく質だけが不足しているのかによって、選ぶものは変わります。
栄養補助食品にはいろいろな種類がある
「栄養補助食品」という言葉は幅広く使われています。たんぱく質を中心に補う粉末、エネルギーとたんぱく質を含む飲料、ビタミンやミネラルも含む総合的な食品、ゼリーやプリン状の食品などがあります。
また、「栄養機能食品」と、食事量が少ない人のエネルギーやたんぱく質を補う食品は、目的が同じではありません。栄養機能食品は、特定の栄養成分を補給し、その機能を表示する食品です[1]。
飲み込みにくい人や病気の人など、特別な用途に適することを表示する「特別用途食品」もあります。特別用途食品は、その表示について国の審査と許可を受ける制度です[2]。誰のために、何を補う食品なのかを確認することが大切です。
使い始める目安は「食事で不足が続くとき」
まずは、食べられない原因を探し、食べやすい調理、ちょい足し、間食、買い物や配食の支援などを検討します。それでも必要な量を取れない場合に、栄養補助食品の利用を考えます[3]。
具体的には、次のような場合です。
- 食事量が以前の半分ほどに減った状態が続いている
- 意図せず体重が減っている
- 一度に少量しか食べられず、間食やちょい足しでも補い切れない
- 肉、魚、卵、大豆製品などをほとんど食べられない
- 病気や手術後などで、食事量が落ちている
- 医師や管理栄養士から、栄養補給が必要と判断された
世界保健機関(WHO)は、低栄養状態にある高齢者について、栄養に関する助言とともに経口的な栄養補助を行うことを推奨しています[4]。つまり、商品だけを渡して終わるのではなく、食事全体を見直しながら使うことが基本です。
一方、体重が安定し、3食から必要なエネルギーと栄養素を取れている人が、年齢だけを理由に追加する必要はありません。
「何を補うか」で選ぶ
体重が減り、食事全体が少ない場合は、たんぱく質だけでなくエネルギーも補えるものが候補になります。たんぱく質食品は食べられているものの、特定の栄養素が不足している場合には、別の選択が必要です。
選ぶ際には、次の項目を確認します。
- 1個または1本当たりのエネルギーとたんぱく質
- 糖質、脂質、食塩相当量
- カリウム、リンなどのミネラル
- 1回に食べたり飲んだりできる量
- 液体、ゼリー、粉末などの形状
- 牛乳や大豆などのアレルギー原料
「高たんぱく」「栄養たっぷり」という言葉だけでは、その人に必要なものか判断できません。栄養成分表示を見て、普段の食事で足りない部分と合っているかを確認します。
食事を邪魔しない時間と量で使う
栄養補助食品で満腹になり、次の食事を残してしまえば、一日の摂取量が増えないことがあります。食事の直前を避け、食事と食事の間に少量ずつ取る方法があります。1本を一度に飲めない人は、衛生面に注意しながら複数回に分けることも考えます。
味や甘さに飽きて続かない場合は、種類や温度を変える方法があります。ただし、粉末は表示どおりの濃さや方法で調製することが基本です。濃くしたり薄くしたりすると、予定した栄養量や水分量が変わる場合があります。
液体でむせる人に、飲料タイプをそのまま勧めるのは危険なことがあります。ゼリー状なら必ず安全というわけでもありません。むせ、食後の声の変化、口の中への食べ物の残留がある場合は、医師、歯科医師、言語聴覚士、管理栄養士などに相談してください。
持病がある人は自己判断で選ばない
糖尿病では糖質、腎臓病ではたんぱく質、カリウム、リン、心不全などでは塩分や水分への配慮が必要な場合があります。薬との飲み合わせや、食事療法との整合性を確認したほうがよい人もいます。
持病がある人や複数の薬を使用している人は、商品の栄養成分表示や原材料表示を、医師、管理栄養士、薬剤師に見せて相談すると安心です。特に治療食を指示されている場合は、自己判断で追加しないでください。
始めた後の「評価」が大切
栄養補助食品は、買って飲み続けることが目的ではありません。開始日、種類、摂取量、食事量、体重を記録し、一定期間後に変化を確認します。下痢や便秘、吐き気、満腹感が起きていないか、食事量がかえって減っていないかも見ます。
体重減少が止まらない、食欲が戻らない、筋力や活動量が低下している場合は、商品の量や種類だけでなく、食べられない原因そのものを見直す必要があります。
急にほとんど食べられなくなった、水分も取れない、短期間で体重が減った、発熱、息苦しさ、強いだるさ、繰り返すむせがある場合は、栄養補助食品で様子を見ず、医療機関へ相談してください。
栄養補助食品を使うタイミングは、「高齢になったとき」ではなく、「食事だけでは必要な栄養を補えないと分かったとき」です。
食事を基本に、不足分を適切な食品で補い、体重や活動の変化まで確かめる。その一連の支援の中で使うことが大切です。
執筆者
一般社団法人在宅栄養ケア推進基金
参考文献・参考資料
[1]World Health Organization「Supplemental nutrition with dietary advice for older people affected by undernutrition」
[2]消費者庁「栄養機能食品について」
[3]消費者庁「特別用途食品について」
[4]Volkert D, et al. “ESPEN practical guideline: Clinical nutrition and hydration in geriatrics.” Clinical Nutrition. 2022;41(4):958-989.
初回公開日
2026年9月15日
最終更新日
2026年9月15日
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