48.病院に来てから低栄養を見つけるのでは遅い?

病院へ入院したときに、初めて「低栄養です」「栄養状態が悪くなっています」と言われる高齢者がいます。

病院で低栄養を見つけ、治療や栄養管理を始めることには大きな意味があります。その時点からでも、できることはたくさんあります。

しかし、病院だけを低栄養の発見場所にしてしまうと、体重や筋肉がすでに減り、病気や生活機能の低下が進んだ後になりやすいという問題があります。

大切なのは、病院で見つけることを「遅過ぎる」と考えることではありません。入院する前の小さな変化を、地域でどれだけ早く見つけられるかを考えることです。

低栄養は入院した日に始まるわけではない

高齢者の低栄養は、入院前から少しずつ進んでいることがあります。

病気によって食欲が落ちていた。歯や入れ歯が痛くて、食べられるものが減っていた。買い物や料理が負担になり、簡単な食事だけで済ませていた。配偶者を亡くして、一人で食べることが増えていた。

このような変化が数週間、数カ月と続き、体重や筋肉が減っていたところに、肺炎、心不全、骨折などが重なって入院に至ることがあります。

この場合、低栄養は入院によって起こったのではありません。入院は、それまで見えにくかった栄養問題が明らかになる機会だったとも考えられます。

低栄養の状態で病気になると回復の負担が大きくなる

病気から回復するためには、普段以上にエネルギーやたんぱく質が必要になることがあります。

一方、発熱、痛み、吐き気、息苦しさなどがあれば、食事量は減ります。身体の中で炎症が起これば、筋肉が分解されやすくなる場合もあります。

つまり、必要な栄養が増える一方で、食べられる量は減るという状況が起こり得ます。

もともと栄養状態が低下していた人では、病気や治療に耐えるための余力が少なくなっています。低栄養は、治療経過、合併症、身体機能、生活の質などの悪化と関連することが知られています。[1][2]

「病気を治してから栄養を考える」のではなく、病気の治療と栄養管理を並行して行うことが重要です。

入院中にも低栄養は進む可能性がある

入院すれば、食事が提供されるため、栄養状態は自然に改善すると思うかもしれません。

しかし、病院食が出ていても、すべて食べられているとは限りません。

検査や手術による絶食、治療による吐き気、痛み、慣れない環境、睡眠不足、口腔内の問題、飲み込みにくさなどによって、食事量が減ることがあります。安静期間が長くなれば、身体を動かさないことによって筋肉が減る可能性もあります。

大切なのは、「食事が出ているか」ではなく、「本人が実際にどのくらい食べられているか」です。

入院時に低栄養リスクを確認し、必要に応じて詳しい評価を行うだけでなく、入院中も体重、食事摂取量、筋肉や身体機能の変化を確認する必要があります。

日本栄養治療学会が紹介するGLIM基準の実施例でも、入院患者に栄養スクリーニングを行い、リスクがある人には詳しい栄養評価と栄養ケアを行う流れが示されています。[3]

病院で見つけることは決して無駄ではない

入院時に低栄養が見つかったとしても、「もっと早く見つけられなかったから、もう遅い」ということではありません。

病院では、低栄養の程度だけでなく、その原因となる病気、炎症、消化吸収の問題、口腔や嚥下機能、薬の影響などを詳しく調べることができます。

医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、歯科医師、歯科衛生士、言語聴覚士、リハビリテーション専門職などが連携し、治療と栄養管理を同時に進められることも病院の強みです。

病院での発見は重要です。問題は、病院に入るまで、低栄養を確認する機会がほとんどない状態を放置してしまうことです。

入院前に気づけるサインがある

低栄養を早い段階で見つけるために、特別な検査がなければ何もできないわけではありません。

例えば、次のような変化が手がかりになります。

  • 意図せず体重が減っている
  • 食事量や食事回数が減った
  • 服やベルトが緩くなった
  • 歩く速度が遅くなった
  • 立ち上がるときに手を使うようになった
  • 外出や買い物が減った
  • 肉や魚などを食べなくなった
  • むせ、噛みにくさ、口の痛みがある
  • 病気の後、体重や元気が戻らない
  • 薬が変わってから食欲が落ちた

こうした変化は、家族だけでなく、診療所、歯科医院、薬局、訪問看護、通所介護、配食サービスなどでも見つけられます。

国際的な高齢者の栄養ガイドラインでも、低栄養リスクを早期に発見するため、すべての高齢者に対する定期的な栄養スクリーニングが推奨されています。[1]

発見後は医療へつなぐ

地域で栄養リスクに気づくことと、病気を診断することは別です。

体重減少や食欲低下が見つかったら、MNA-SFなどで栄養リスクを確認し、必要に応じてかかりつけ医などへつなぎます。

特に、急激な体重減少、強い倦怠感、発熱、息苦しさ、繰り返す嘔吐、むくみ、飲み込みの急な悪化などがある場合は、「栄養をつければよい」と自己判断せず、病気が隠れていないか医療機関で確認することが必要です。

地域での低栄養予防は、病院の代わりに診断や治療をすることではありません。小さな変化に気づき、医療が必要な人を早くつなぐための取り組みです。

病院に入る前から、退院した後まで

低栄養対策は、入院したところから始めるだけでは十分ではありません。

地域で早く気づく。病院で詳しく評価し、病気の治療と栄養管理を行う。退院するときには、体重、食事量、食事形態、必要な支援を在宅の関係者へ伝える。そして、退院後も状態を確認する。

この流れがつながって初めて、栄養ケアは継続します。

病院に来てから低栄養を見つけることが、必ずしも遅過ぎるわけではありません。

しかし、病院に来なければ見つからない仕組みでは、早期発見とはいえません。

高齢者が暮らしている場所で小さな変化を見つけ、必要なときに病院へつなぎ、退院後は再び地域で支える。その切れ目のない仕組みをつくることが、低栄養の進行と、それに伴う生活機能の低下を防ぐために必要です。


執筆者
一般社団法人在宅栄養ケア推進基金
参考文献・参考資料

[1] Volkert D, et al. ESPEN practical guideline: Clinical nutrition and hydration in geriatrics. Clinical Nutrition. 2022;41(4):958–989.
[2] 日本栄養治療学会「GLIM基準について」
[3] 日本栄養治療学会「GLIM基準を用いた栄養アセスメントの実施例」
[4] 厚生労働省「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施について」

初回公開日
2026年9月26日

最終更新日
2026年9月26日