66.かかりつけ医に「栄養状態」を伝えるには

「最近、母があまり食べなくなったので、先生に相談したけれど、『様子を見ましょう』で終わってしまった」

このような経験をした家族は少なくありません。医師が栄養を重視していないとは限りません。「食べていない」「やせた気がする」だけでは、いつから、どの程度変化し、どのような原因が考えられるのかを判断する情報が不足していることがあります。

限られた診察時間の中で栄養状態を適切に伝えるには、「低栄養だと思います」という結論よりも、体重や食事量の変化を具体的に示すことが重要です。

最も伝えたいのは「以前からの変化」

医師にとって重要なのは、現在の体重だけではありません。以前と比べてどう変わったか、その変化が本人の意思によるものかという情報です。

「今は48kgです」だけでなく、「3か月前は52kgで、減量していないのに4kg減りました」と伝えます。

体重52kgから48kgへの減少は、元の体重の約7.7%です。国際的なGLIM基準では、意図しない体重減少が低栄養診断に用いる身体的な基準の一つになっています[1]。

体重が分からない場合でも、「ベルトの穴が二つ変わった」「以前の服が緩くなった」「頬やふくらはぎが細くなった」など、観察した変化を伝えられます。

ただし、可能であれば今後は同じ条件で定期的に体重を測り、日付とともに記録しておきましょう。

食事量は「少ない」ではなく割合で伝える

「食欲がありません」だけでは、食べる量がどれほど減っているか分かりません。

「以前は一日3食だったが、今は2食」「茶わん一杯食べていたご飯を半分残す」「おかずは数口しか食べない」「1週間ほど、普段の半分程度しか食べていない」など、回数、期間、割合を伝えます。

可能であれば、食べた物を数日間メモするか、食事の前後を写真に撮っておく方法もあります。正確な栄養計算をする必要はありません。以前との違いが分かることが大切です。

水分量も重要です。お茶や水をどのくらい飲んでいるか、尿の回数が減っていないかも伝えます。

六つの情報を一枚のメモにする

診察前に、次の内容を一枚にまとめておくと伝えやすくなります。

  1. 体重
    現在の体重、以前の体重、いつから何kg減ったか、減量の意思があったか。
  2. 食事と水分
    一日の食事回数、普段の何割程度食べているか、水分量、食べられる食品。
  3. 身体症状
    発熱、痛み、息切れ、吐き気、嘔吐、下痢、便秘、腹部の張り、強いだるさなど。
  4. 口と飲み込み
    歯の痛み、義歯の不具合、口の乾燥、むせ、飲み込みにくさ、食後の声の変化。
  5. 薬と病気
    最近始めた薬、増減した薬、市販薬やサプリメント、入退院、持病の変化。
  6. 生活の変化
    買い物や調理ができるか、一人で食べているか、活動量、気分、認知機能の変化。

高齢者の低栄養には、口腔・嚥下機能、薬の副作用、多病、孤立や生活環境など、複数の要因が関係します[2]。そのため、食事内容以外の情報も診断の手がかりになります。

診察では最初に要点を伝える

診察の最後に「そういえば、食欲もなくて」と付け加えると、十分に相談する時間がなくなることがあります。

診察が始まったら、まず次のように要点を伝えます。

今日は、意図しない体重減少と食事量の低下について相談したいです。3か月で52kgから48kgに減り、この1か月は普段の半分程度しか食べていません。原因となる病気や薬の影響がないか確認していただけますか。

この伝え方には、相談の目的、期間、変化の程度、医師に確認してほしいことが含まれています。

「栄養剤を出してください」「この薬が原因です」と最初から対応や原因を決めるのではなく、まず医学的な評価を依頼します。病気、薬、口腔・嚥下、心理状態などを確認したうえで、必要な対応を考えるためです。

スクリーニング結果は点数と項目を伝える

薬局や介護事業所などでMNA-SFを実施している場合は、「低栄養でした」とだけ伝えず、実施日、合計点、該当した項目を伝えます。

8月10日にMNA-SFを実施し8点でした。食事量の減少、3か月以内の体重減少、歩行能力の低下に該当しています。

MNA-SFは低栄養リスクを見つけるためのスクリーニングであり、それだけで医学的な診断が確定するものではありません。GLIM基準では、スクリーニング後に体重減少、低BMI、筋肉量減少などの身体的変化と、摂取量低下、消化吸収の問題、疾患負荷・炎症などを評価して診断します[1]。

そのため、「診断してほしい」と迫るのではなく、「詳しい評価が必要か判断してほしい」と伝えるのが適切です。

アルブミン検査だけを求めない

栄養状態が心配になると、「アルブミンを調べてください」と考えることがあります。しかし、アルブミン値は炎症、肝機能、腎機能、体内の水分量などの影響を受け、食事量や体たんぱく量を直接表すものではありません。

アルブミン値が正常でも低栄養を否定できず、低値でも食事不足が原因とは限りません[3]。

必要な診察や検査は、症状、持病、体重変化などを踏まえて医師が判断します。「低栄養かどうか」だけでなく、「体重減少や食欲低下の原因を確認してほしい」と相談することが重要です。

家族以外の支援者から伝える場合

薬剤師、管理栄養士、ケアマネジャー、訪問看護師、訪問介護員、デイサービス職員などが変化に気づくこともあります。

支援者が情報提供する場合は、原則として本人の同意を得たうえで、観察した事実と本人から聞いた内容を分けて記載します。

例えば、「低栄養である」と断定するのではなく、次のように書きます。

7月の記録では体重52kg、10月は48kgでした。本人は減量を希望しておらず、最近1か月は食事摂取量が従来の約半分とのことです。新たに食後のむせも確認しています。医学的評価の必要性についてご検討をお願いいたします。

連絡先を記載し、医師から確認事項や指示がある場合に返答を受けられるようにします。厚生労働省も、高齢者の低栄養防止等では、かかりつけ医や専門医と情報を共有し、助言や指導を得ながら連携することの重要性を示しています[4]。

受診後の内容を地域へ戻す

医師に伝えて終わりではありません。検査や診察の結果、食事に関する注意、薬の変更、管理栄養士や歯科への紹介内容などを、本人の同意を得て家族や支援者と共有します。

次回の体重測定日や再受診の時期も確認しておきます。体重や食事量がさらに低下した場合に、どこへ連絡するかを決めておくと安心です。

かかりつけ医に栄養状態を伝える目的は、低栄養という診断名をつけてもらうことだけではありません。体重減少や食欲低下の原因を調べ、安全で適切な栄養支援につなげることです。

「食べていません」から一歩進んで、「いつから、何が、どれだけ変わったか」を伝える。その具体的な情報が、地域で見つけた低栄養リスクを医療につなぐ共通言語になります。


執筆者:一般社団法人在宅栄養ケア推進基金

参考文献・参考資料

[1]日本栄養治療学会「GLIM基準について」
[2]厚生労働省「高齢者の低栄養予防」e-ヘルスネット
[3]日本栄養治療学会「GLIM よくあるご質問」
[4]厚生労働省「低栄養防止・重症化予防等の推進―モデル事業実施のポイント」

初回公開日
2026年10 月3日

最終更新日
2026年10月3日