83.低栄養と医療費・介護費にはどんな関係がある?

低栄養を予防すると、医療費や介護費を減らせるのでしょうか。

低栄養は医療・介護サービスの利用や費用の増加と関連しています。ただし、低栄養になれば必ず費用が増え、栄養指導をすれば費用が減ると単純にはいえません。

低栄養の人には重い病気の人も多く、病気が低栄養と費用増加の両方に影響している可能性があります。負担が増える経路を見る必要があります。

医療費は「食事代」ではなく治療の経過から増える

低栄養による医療費の増加は、食事や栄養補助食品の費用だけの話ではありません。栄養状態が悪い患者では、合併症、回復の遅れ、入院期間の長期化、再入院などが生じやすく、検査や治療、リハビリテーションなどの費用に影響します。

施設や地域の高齢者を対象としたレビューでも、低栄養は医療費の増加と関連していました[1]。入院患者では、栄養状態が良好な患者より入院期間と費用が大きかったという研究もあります[2]。

ただし、これらの多くは観察研究です。国や医療制度によって金額も異なるため、海外の結果をそのまま日本に当てはめることはできません。

介護費との関係は生活機能を介して考える

介護費との関係は、さらに複雑です。

体重や筋肉が減り、歩行、入浴、排泄などが難しくなれば、見守りや介助、介護サービス、福祉用具などが必要になる場合があります。

転倒や入院後に介護サービスが必要になることもあります。反対に、認知症や身体機能低下の結果として低栄養になる場合もあります。

つまり、低栄養と要介護状態は一方向ではなく、互いを悪化させる可能性があります。低栄養だけを改善すれば介護費が必ず下がるとはいえませんが、生活機能低下の連鎖を防ぐ重要な介入点にはなります。

栄養介入にも費用がかかる

低栄養対策にも、スクリーニング、診察、栄養相談、歯科治療、配食などの費用と人手が必要です。介入しただけで「医療費を削減した」とは評価できません。

評価するなら、次のような項目を介入前後で確認する必要があります。

  • 栄養状態、筋力、日常生活動作
  • 受診、入院、再入院
  • 介護度やサービス利用
  • 生活の質、家族の負担、支援費用

栄養介入には、摂取量や体重を改善する効果が示されていますが、医療・介護費への効果は対象者や方法で異なります[3]。一定期間追跡して判断することが大切です。

早期発見は「大きな支援になる前」の介入

低栄養が重くなると、病気の治療、食事介助、嚥下調整食、訪問診療、介護サービスなど、支援が複雑になります。

一方、「最近3kgやせた」「食事を残す」といった段階で気づけば、義歯や薬の見直し、買い物支援、食事の工夫などで改善できる可能性があります。

厚生労働省も、後期高齢者の低栄養対策を、生活の質の維持・向上や医療費適正化を目指す保健事業の一つとして位置づけてきました[4]。

低栄養予防の第一の目的は、費用を減らすことではありません。本人が食べ、動き、自分らしく暮らせる期間を守ることです。その結果として入院や要介護化を減らせれば、本人や家族の負担が軽くなり、医療・介護資源を必要な人へ届けやすくなります。

低栄養対策の価値は、食費と医療費の単純な比較では測れません。早期発見、原因評価、介入、継続確認を一つの流れとして行い、健康と費用の両面から効果を確かめる必要があります。


執筆者:一般社団法人在宅栄養ケア推進基金

参考文献・参考資料

[1]Abizanda P, et al.「Costs of Malnutrition in Institutionalized and Community-Dwelling Older Adults」Journal of the American Medical Directors Association, 2016.
[2]Lim SL, et al.「Malnutrition and its impact on cost of hospitalization, length of stay, readmission and 3-year mortality」Clinical Nutrition, 2012.
[3]Reinders I, et al.「Effectiveness of nutritional interventions in older adults at risk of malnutrition across different health care settings」Clinical Nutrition, 2019.
[4]厚生労働省「後期高齢者の低栄養防止等の推進について」

初回公開日
2026年10月12日

最終更新日
2026年10月12日