『高齢者の低栄養を知る100の話“86”』
人口が減れば、病院や介護施設も同じ割合で減らせばよいのでしょうか。
患者や利用者が減っても、救急、入院、在宅療養、介護を必要とする人は残ります。施設がなくなれば、高齢者は遠方まで移動し、家族や救急搬送の負担も増えます。
一方、施設を従来と同じ規模・機能で維持すれば、経営や人材確保が難しくなります。必要な機能をどのような形で残すかが問われます。
患者が減っても固定費は簡単に減らない
病院には、建物や医療機器の維持費と人件費がかかります。救急や入院を担うなら、患者が少ない時間帯にも人員が必要です。
介護施設も、空床が生じても夜勤、調理、清掃、設備管理などの体制が必要です。利用者数に合わせて、すべての費用をすぐには減らせません。
さらに、建物の老朽化や物価上昇も重なります。厚生労働省の検討会では、築40年を超えると見込まれる病棟が相当数あり、建て替え費用の上昇も課題として示されています[1]。
患者が減る地域ほど経営が厳しくなり、必要な施設ほど維持できなくなるという矛盾が生じます。
稼働率だけでは測れない地域の役割
利用者が少ないからといって、地域の病院や施設に価値がないとは限りません。
救急病院、退院後の患者を受け入れる介護施設、在宅療養を支える診療所や訪問看護の一つが欠けても、ほかの機関へ負担が集中します。
地域医療には、普段は利用されていなくても、急変時に対応できる機能を確保するという面があります。単年度の収支や病床稼働率だけで、その必要性を判断することはできません。
ただし、すべての施設が同じ診療科、病床、サービスを持ち続けることも現実的ではありません。
施設ではなく「機能」を残す
厚生労働省は、2040年に向けた地域医療構想で、医療機関の役割分担、病床機能の分化・連携、再編・集約化を進める方針を示しています[2]。
例えば、手術や専門的な救急医療は拠点病院に集め、地域の病院は高齢者救急、回復期、退院支援、在宅医療との連携を担います。人材や設備の共同利用も考えられます。
介護についても、地域差が大きくなります。すでに需要が減少している地域がある一方、都市部を中心に今後も利用者が増える地域があります。国も、人口減少地域では需要に応じてサービス基盤を計画的に確保し、施設の機能を柔軟に変える必要性を示しています[3]。
守るべきなのは建物や病床数そのものではなく、救急、入院、退院支援、在宅療養、介護といった住民に必要な機能です。
最大の制約は働く人が足りないこと
施設があっても、働く人がいなければサービスは提供できません。厚生労働省は、介護サービスの見込み量から、2040年度に約272万人の介護職員が必要になると推計しています。これは2022年度より約57万人多い人数です[4]。
全国で必要数が増える一方、人口減少地域では採用できる若い世代そのものが減ります。医療・介護職だけでなく、給食、清掃、送迎、設備管理などの人材も必要です。
そのため、業務の効率化やデジタル化だけでなく、重症化を防ぎ、限られた人材を本当に専門的な支援が必要な人へ振り向ける取り組みが欠かせません。
低栄養予防も地域機能を守る一部になる
低栄養を放置して筋力や生活機能が低下すれば、転倒、入院、再入院、介護量の増加につながる可能性があります。これらが重なると、病院や介護施設の限られた人材をさらに必要とします。
薬局、配食、訪問介護、デイサービスなどで体重減少や食事量低下に早く気づき、医療や栄養支援へつなぐことには、本人の自立を守るだけでなく、地域の医療・介護機能への負担を抑える意味があります。
もちろん、予防だけで病院や介護施設が不要になるわけではありません。予防で支えられる人は地域で支え、専門的な治療や介護が必要な人には確実にサービスを届ける。その役割分担が、人口減少時代の地域医療には必要です。
施設を維持するとは、すべてを現在のまま残すことではありません。地域に欠かせない機能を見極め、施設同士と地域の生活支援をつなぎながら、持続できる形へ組み替えることなのです。
執筆者:一般社団法人在宅栄養ケア推進基金
参考文献・参考資料
[1]厚生労働省「第2回地域医療構想及び医療計画等に関する検討会 議事録」
[2]厚生労働省「2040年に向けた地域医療構想について」
[3]厚生労働省「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方に関するとりまとめ」
[4]厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」
初回公開日
2026年10月13日
最終更新日
2026年10月13日
「高齢者の低栄養予防」についてお気軽にお問い合わせください!
・低栄養のチェックやアドバイスを行ってくれる薬局について聞きたい
・配食サービスについて教えてほしい
・健康支援型配食サービスを導入したい
・低栄養予防事業を健康増進支援薬局の一環として進めたい
・栄養ケア支援システムについて話を聞いたみたい
・フレイルケア食(たんぱく補助・食欲増進等)の販売について相談したい
・低栄養予防事業を自治体として進めたい(自治体に提案したい)
・高齢者施設や通所施設において、栄養ケアの取り組みを進めたい
・退院後の栄養ケアを実施している薬局を教えてほしい
・高齢者向けフレイルケア食の開発や販売を拡大したい
・事業連携や情報交換・意見交換をしたい 他