16.低栄養を早期発見するために、まず体重を測ろう

低栄養を早く見つけるために、家庭でできる最も基本的なことの一つが体重測定です。

食欲が少し落ちても、本人は「いつもどおり食べている」と感じていることがあります。家族も、毎日顔を見ていると身体の変化に気づきにくいものです。体重は、見た目や感覚だけでは分かりにくい変化を数字で確かめる手がかりになります。

ただし、体重が軽い人だけが低栄養になるわけではなく、体重を測るだけで低栄養を診断できるわけでもありません。大切なのは、一回の数字に一喜一憂することではなく、その人の体重がどのように変化しているかを見ることです。

見たいのは「今の体重」より「変化」

「何kgなら安心ですか」と聞かれることがありますが、適切な体重は身長、体格、病気などによって異なります。同じ50kgでも、長年50kgを保っている人と、半年で55kgから50kgに減った人とでは意味が違います。

特に注意したいのは、本人が減量しようとしていないのに体重が減る「意図しない体重減少」です。厚生労働省の「後期高齢者の質問票」には、「6か月間で2~3kg以上の体重減少がありましたか」という項目があります。[1] これは診断基準ではありませんが、栄養状態や病気の有無を詳しく確認するきっかけになります。

国際的な低栄養の診断枠組みであるGLIM基準でも、意図しない体重減少は重要な項目の一つです。2025年の改訂でも、過去6か月で5%を超える体重減少などの基準は維持されています。[2]

たとえば、以前の体重が50kgなら2.5kg、60kgなら3kgの減少が5%に当たります。ただし、この数字に届くまで待つ必要はありません。少しずつ減り続けている、食欲低下や疲れやすさを伴う場合は、早い段階で相談しましょう。

同じ条件で測ると変化が分かりやすい

体重は、食事や水分、排尿・排便、服装によって変動します。測るたびに条件が違うと、本当に体重が変化したのか判断しにくくなります。

家庭では、次のように条件をそろえると記録しやすくなります。

  • 同じ体重計を使う
  • 平らで硬い床に置く
  • 朝起きて排尿した後、朝食前など、同じ時間帯に測る
  • できるだけ同じ程度の服装で測る
  • 測った日と体重を紙やカレンダーに記録する

毎日測らなければならないわけではありません。まずは週1回や月に数回など、無理なく続けられる頻度を決めます。心臓病や腎臓病などで医師から毎日の測定を指示されている場合は、その指示に従ってください。

立った姿勢が不安定な人は、転倒を防ぐことが最優先です。一人で無理に体重計へ乗らず、家族や介護職に支えてもらう、手すり付きや椅子型の体重計を利用するなど、安全な方法を考えます。

記録は「線」で見る

一日の体重は、水分量などによって多少増減します。前回より数百g減っただけで、すぐに低栄養と考える必要はありません。

記録した体重を日付順に並べ、数週間から数か月の流れを見ます。数字だけでなく、「食欲がなかった」「風邪をひいた」「薬が変わった」「入院した」「歯が痛かった」といった出来事も一緒に書いておくと、原因を考えやすくなります。

本人が測定を忘れたり、記録が難しかったりする場合は、家族、訪問介護、デイサービス、配食、薬局など、日常的に接点のある人や場所で変化を共有する方法もあります。体重の記録は、医師や管理栄養士に相談するときにも役立ちます。

体重が減っていなくても安心とは限らない

体重が変わらなくても、筋肉が減って脂肪が増えていれば、身体の機能は低下している可能性があります。むくみがある人では、身体にたまった水分によって、筋肉や栄養状態の低下が体重に表れにくいこともあります。

反対に、脱水、下痢、発熱、利尿薬の影響などによって、水分が減ったために体重が急に落ちる場合もあります。急な増減は、食事だけの問題とは限りません。

そのため、体重と一緒に次の変化も確認します。

  • 食事量や食べる食品の種類が減った
  • 歩くのが遅くなった
  • 椅子から立ち上がりにくくなった
  • 服やベルトが緩くなった
  • 足のむくみが強くなった
  • 疲れや息切れが増えた

体重は重要ですが、食事量、筋力、体調、病気などを含めて見る必要があります。

減った原因を探すことが大切

体重が減っていると分かっても、単に食事量を増やせばよいとは限りません。歯や入れ歯の問題、飲み込みにくさ、薬の副作用、胃腸の病気、心臓・肺・腎臓の病気、糖尿病、がん、うつ状態、認知機能の低下などが隠れている可能性があります。[3]

意図しない体重減少が続く、短期間で大きく減る、食欲低下、発熱、痛み、吐き気、下痢、息切れ、むくみ、飲み込みにくさなどを伴う場合は、かかりつけ医に相談してください。体重の記録と、いつから何が変わったかを伝えると役立ちます。

高齢期は、体重が減ることを必ずしも喜ばしい変化とは考えません。まず体重を測り、記録し、変化に気づく。そして原因を確かめ、必要な食事や医療、生活支援につなげる。体重測定は、低栄養を早期発見するためのゴールではなく、支援を始める入口です。


執筆者
一般社団法人在宅栄養ケア推進基金

参考文献・参考資料

[1] 厚生労働省「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施について」
[2] Cederholm T, et al. “The GLIM consensus approach to diagnosis of malnutrition: A 5-year update”
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高齢者の低栄養予防」

初回公開日
2026年9月8日

最終更新日
2026年9月8日