77.低栄養には「原因」がある――だから具体的な介入につながる

高齢者の体重が減り、食事量も少なくなっていると、「年を取れば食が細くなるのは仕方がない」と考えられがちです。

しかし、低栄養は単なる老化現象ではありません。食べられなくなったこと、必要な栄養を体内で利用できなくなったこと、病気によって必要量が増えたことなど、何らかの原因があります。

原因が違えば、必要な介入も違います。低栄養に注目する意義は、食事を増やすことだけではなく、「なぜ栄養状態が悪くなったのか」を探し、具体的な解決策へつなげられることにあります。

低栄養は「食べていない」だけではない

低栄養の原因は、大きく分けると、食事摂取量の低下、消化吸収の問題、病気による負荷や炎症などがあります。

国際的なGLIM基準でも、低栄養の診断には、体重減少、低BMI、筋肉量減少などの身体的な変化に加え、食事摂取量の低下、消化吸収の問題、病気による負荷・炎症といった原因に関する基準を用います[1]。

つまり、低栄養を評価することは、やせているかを確認するだけではありません。体に何が起きているのかを考えることでもあります。

原因によって支援は変わる

例えば、同じ「食事量が減った」という状態でも、必要な対応は異なります。

病気や炎症が原因なら、食事の工夫だけでは改善しません。感染症、心不全、がん、消化器疾患などが隠れている可能性があり、医療機関での評価と治療が必要です。

薬を始めた後に食欲低下、吐き気、眠気、口の渇き、便秘などが起きたなら、薬剤師や処方医へ相談します。本人の判断で薬を中止するのではなく、服薬状況と症状の経過を整理して伝えます。

歯が痛い、義歯が合わない、噛めない場合は歯科へ、むせや飲み込みにくさがある場合は医師、歯科医師、言語聴覚士などへつなぎます。

買い物に行けない、料理ができない、食費を十分に確保できない場合は、栄養指導だけでは解決できません。ケアマネジャー、地域包括支援センター、配食や生活支援サービスなどの関与が必要です。

配偶者との死別や孤食、抑うつによって食欲が低下している場合は、人との交流や心理面への支援も考えます。

「もっと食べて」では原因が残る

低栄養が見つかったとき、すぐに高エネルギー食品や栄養補助食品を勧めることがあります。それが役立つ人もいますが、原因を確認せずに食品だけを追加しても、食べられない理由が残れば続きません。

義歯が痛い人に固い肉を勧めても食べられません。薬で吐き気がある人に食事量を増やすよう求めれば、本人の負担になります。病気が進行している人に食品だけを勧めれば、受診が遅れる可能性もあります。

栄養補助食品などは、原因への対応と並行して不足分を補うための手段です。商品を選ぶことが介入の出発点ではありません。

原因は一つとは限らない

高齢者の低栄養では、複数の原因が重なっていることが少なくありません。

例えば、義歯が合わず食べる量が減ったところへ、薬による口の渇きが加わり、さらに一人暮らしで料理が面倒になっていることがあります。

この場合、歯科受診だけ、薬の見直しだけ、配食の導入だけでは十分でない可能性があります。本人の話を聞き、体重変化、食事量、症状、薬、口腔機能、生活状況を組み合わせて考えます。

地域で原因を確定する必要はありません。重要なのは、原因の手がかりを集め、適切な専門職へ渡すことです。

低栄養は医療と生活支援をつなぐ

低栄養の原因を考えると、医師、管理栄養士、薬剤師、歯科医師、言語聴覚士、ケアマネジャー、訪問職、配食事業者など、それぞれの役割が見えてきます。

薬局で体重減少と食欲低下に気づき、薬との関係を確認して処方医へ情報提供する。デイサービスで食べ残しが増えたことを把握し、家族やケアマネジャーへ伝える。配食時に弁当が手つかずで残っていることから、体調悪化を見つける。そのような連携が可能です。

厚生労働省も、通いの場などで低栄養等の支援対象者を把握し、状態に応じた保健指導を行い、必要な医療・介護サービスへつなぐことを示しています[2]。

支援後は、体重や食事量がどう変わったかを確認します。改善しなければ、別の原因がないか、介入が本人の生活に合っていたかを見直します。

低栄養には原因があります。だからこそ、発見した後に原因を探り、医療、栄養、口腔、薬、介護、生活支援という具体的な介入へ進むことができます。

「低栄養だから食べさせる」のではなく、「なぜ低栄養になったのかを考え、その原因に働きかける」。それが、低栄養予防を実際の改善につなげる基本です。


執筆者:一般社団法人在宅栄養ケア推進基金

参考文献・参考資料

[1]日本栄養治療学会「GLIM基準について」
[2]厚生労働省「高齢者の医療の確保に関する法律に基づく高齢者保健事業の実施等に関する指針」
[3]厚生労働省・健康日本21アクション支援システム「高齢者の低栄養予防」
[4]Volkert D, et al. “ESPEN practical guideline: Clinical nutrition and hydration in geriatrics.” Clinical Nutrition. 2022;41(4):958-989.

    初回公開日
    2026年10月8日

    最終更新日
    2026年10月8日