78.低栄養を入口にすると医療・介護・食がつながる

高齢者の低栄養は、医療だけでも、介護だけでも、食事を届けるだけでも解決できません。

病気を治療しても、自宅で食事を用意できなければ栄養状態は改善しません。配食を利用しても、食欲を低下させる病気や薬の影響が残っていれば、弁当を食べられないことがあります。

低栄養を入口にすると、医療、介護、食がそれぞれ別のサービスではなく、一人の高齢者を支えるための役割としてつながってきます。

医療は「体の中の原因」を調べる

短期間の体重減少や食欲低下の背景には、感染症、心不全、がん、消化器疾患、抑うつなどが隠れていることがあります。病気による炎症や消化吸収の問題があれば、食事を増やすだけでは改善しません。

医師は診察や検査から医学的な原因を評価し、治療方針を考えます。管理栄養士は病状、体格、食事量などを踏まえ、必要な栄養量や食べ方を検討します。

薬による吐き気、眠気、便秘、口の渇きなどが疑われる場合は、薬剤師が薬の開始・変更時期と症状の経過を整理し、必要に応じて処方医へ伝えます。

医療の役割は、単に「低栄養です」と判断することではありません。なぜ栄養状態が悪化したのかを医学的に確かめ、安全な介入につなげることです。

介護は「生活の中の原因」を見つける

診察室では分からなくても、家庭や介護の現場だから見える問題があります。

訪問介護員は、冷蔵庫に食べ物がない、同じ物ばかり食べている、料理ができなくなったといった変化に気づけます。デイサービスでは、食べ残し、むせ、歩行や表情の変化を継続して観察できます。

ケアマネジャーは、買い物、調理、移動、家族の介護力などを含めて生活全体を調整できます。経済的な問題や認知機能の低下があれば、地域包括支援センターや行政の支援につなぐこともあります。

介護の役割は、栄養指導を行うことだけではありません。本人が実際に食べられる生活環境を整えることです。

食は「介入を毎日実行する」

医学的に必要な栄養量が分かり、介護サービスが整っても、実際の食事が本人に届き、食べられなければ栄養状態は変わりません。

配食サービス、食品事業者、地域の食堂などは、栄養支援を毎日の生活の中で実行する役割を担います。

ただし、食事を届けるだけで十分とは限りません。食べやすい形態か、量が多すぎないか、本人の好みに合っているか、食べ残しが増えていないかを確認する必要があります。

厚生労働省の健康支援型配食に関する検討でも、利用者の身体・栄養状態を把握し、その人に合った食事を提供するとともに、継続時のフォローアップを行う重要性が示されています[1]。

配達時に弁当が前日のまま残っている、急に受け取りに出てこなくなったといった変化は、体調悪化を知らせるサインにもなります。

共通の情報があれば連携できる

医療、介護、食をつなぐために、複雑な情報をすべて共有する必要はありません。まずは次のような変化を共通して確認します。

  • 以前と現在の体重、減少した期間
  • 食事の回数と、おおよその摂取量
  • 食欲、むせ、噛みにくさ
  • 病気や入退院、薬の変更
  • 買い物、調理、配膳ができるか
  • 誰が次回の状態を確認するか

例えば、「3か月で4kg減り、主食を半分残すようになった」という情報なら、医師は病気の可能性を検討でき、管理栄養士は食事内容を評価できます。介護職は生活上の原因を確認し、配食事業者は量や食形態を見直せます。

厚生労働省も、質問票と健診・医療・介護情報を併用し、高齢者を必要な保健事業や医療機関受診へつなぐことを示しています[2]。

つなぐだけでなく、結果を戻す

連携は、一度紹介して終わりではありません。

医療機関で治療を受けた後、食欲が戻ったのか。配食を始めて、実際に食べられているのか。介護サービスを導入して、体重減少が止まったのか。その結果を確認し、関係者へ戻す必要があります。

改善しなければ、別の原因や支援方法を検討します。そのためには、誰が体重や食事量を確認し、誰へ伝えるのかを決めておくことが重要です。

低栄養は、医療、介護、食のどれか一つの領域に収まる問題ではありません。

だからこそ、低栄養を共通の入口にすると、医療は原因を診断し、介護は食べられない生活上の問題を整え、食の担い手は必要な食事を日々届けるという役割分担ができます。

「食べられなくなった」という一つの変化を、それぞれの専門性で支える。その連携が、地域で低栄養を予防する仕組みになります。


執筆者:一般社団法人在宅栄養ケア推進基金

参考文献・参考資料

[1]日本栄養士会「健康支援型配食サービス―マッチングの実践」
[2]厚生労働省「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理の在り方検討会」
[3]厚生労働省「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施について」
[4]厚生労働省「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施の推進に係るプログラム」

    初回公開日
    2026年10月8日

    最終更新日
    2026年10月8日